日本馬に襲い掛かる大物外国馬3頭の実力をジャッジ。大将格・オーギュストロダンのリアルな適性は?【ジャパンカップ/前編】
オーギュストロダン以外の外国勢の評価は?
ゴリアット(セン4歳/仏・F.グラファール厩舎)はドイツ生産、フランス調教という珍しい存在。通算成績は10戦6勝で、グループレース(重賞)勝ちは今年5月のエドヴィユ賞(仏G3、芝2400m)と、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスステークス、10月のコンセイユドパリ賞(仏G2)の3つと、実績的にはオーギュストロダンに比べると格下である。 しかし、キングジョージでは7番人気という低評価でありながら、オーギュストロダン、レベルスロマンス(ブリーダーズカップ・ターフを2度制すなどG1レース7勝)らを強烈な末脚で撫で斬りにし、のちに凱旋門賞(仏G1)を制する2着のブルーストッキングに2馬身1/4差をつけて圧勝。一気にトップクラスへの階段を上がった。 ジャパンカップへ参戦する理由は、本馬がセン馬であるために凱旋門賞などには出走できないこともひとつの理由。そのうえでブリーダーズカップ・ターフと比較して、大回りな東京競馬場のほうがより本馬にフィットするだろうという考えによるものと、オーナーのフィリップ・バロン・フォン・ウルマン氏が明かしている。 血統的には、父がドイツのリーディングサイアーに輝いたことがあるアドラーフルーク(その父はノーザンダンサー系のインザウイングス)、母の父がシャマーダル(その父はノーザンダンサー系のジャイアンツコーズウェイ)と、重厚なもの。加えて2400m(≒12ハロン)のレースで最速の時計はキングジョージでの2分27秒43と、高速馬場への適性は未知数。血統的に見ても、どちらかと言えばパワー型の本馬は、いかに「フランス現役最強馬」との評判があるとはいえ、好天が予想される今年のジャパンカップでは押さえとするのが妥当ではなかろうか。 ファンタスティックムーン(牡4歳/独・S.シュタインベルク厩舎)は、ドイツ生産-ドイツ調教の強豪である。通算成績は14戦7勝で、主な勝ち鞍には独ダービー(G1、芝・2400m)と、バーデン大賞(G1、芝2400m)がある。昨年、今年と凱旋門賞に参戦しているが、道悪のロンシャン競馬場(昨年が「稍重」、今年が「重」)が合わなかったらしく、それぞれ11着と9着に大敗している。勝ったバーデン大賞が「良」馬場だったように、基本的には道悪は苦手なようだ。ちなみに「稍重」の独ダービーも、最後の直線は馬場が傷んでいない外ラチ近くまで持ち出して差し切っている。 血統を見ると、父シーザムーンはダンツィヒ系の大種牡馬シーザスターズの直仔で、母の父ジュークボックスジュリーはモンジューの直仔。サドラーズウェルズの5×4、ズルムーの5×5というクロスを持つスタミナ豊かな血統で、日本の軽い馬場への適性が高いとは言い難い。実際、ここまで芝の2400mでの最速時計は11着に敗れた昨年の凱旋門賞での2分26秒8(稍重)で、東京を舞台としたスピード競馬には大きな不安を残す。
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