B級感あふれるマヌケな「偽ニュースサイト」が続々誕生 背後に中国企業の名前が浮上
11月5日に読売新聞が報じた、“偽ニュースサイト”の存在。見たことがあるようなウェブサイトが、実は全部“まがい物”だったというのだ。誰もが知る新聞や雑誌の名前をかたっており、「Shincho News」なる新潮社のニュースサイトのような名前のものも。念のためにお伝えしておくと、新潮社のニュースサイトは「デイリー新潮」である。 【実際の画像】「まるで新聞の切り貼りで作った犯行声明文みたいな……」 字体もバラバラでB級感満載の偽ニュースサイト ***
名前がまぎらわしいだけではない。内容は一様に大手メディアのニュースをコピーしたもの。ただ、よくよく見ると中国語やハングルが使われていたり、奇妙な翻訳語があったりで、アラだらけ。 「Shincho News」でライターとされている、ゲームも政治も経済も何でも書ける「筒井萌柚」は調べたところ架空の人物。時刻表示もハングルになっている。記事末尾には著作権の侵害があれば連絡しろとのただし書きがあるものの、連絡先を示すものはどこにもない。 また、読売新聞のパクリサイトと思しき「YOMIURI DAILY」では、記事カテゴリーの「スポーツ」が「体育」に、社会の「社」が旧字体になっている。 一昔前、出来の悪い中国製のコピー商品のパッケージでは「ン」と「ソ」を取り違えたようなものがよく見られたが、それに近い間抜けなB級感あふれまくるクオリティーなのである。現状、少なくとも普通の日本人ならだまされないだろう。
浮かび上がってきた“中国企業”
いったい何の目的でこんなものを作るのか。ITジャーナリストの三上洋氏は、こんな分析をする。 「どのサイトのドメインも今年4月にアメリカの格安サイトで購入されたもので、香港のサーバーを利用していますから運営者は同じだと思います。サイト自体、極めて稚拙な作りですし、内容も大手メディアの記事を自動的に取得しただけ。そういった意味では、まだ準備段階とみるべきかもしれませんが、ゆくゆくは詐欺サイトに誘導するものになる可能性があります。最近、報道機関をかたるサイトがウェブ広告に掲載されることがあり、そこから暗号資産などの投資詐欺に引き込むという手口が横行しています」 想定されるリスクは他にもある。サイバーディフェンス研究所の三浦壮一郎氏が指摘する。 「調べてみると、中国のあるPR企業の名前が浮上してきます。ただ、ここはサイトを作っているだけで、しかるべき“依頼者”がいると思われます。今のところ、コピー記事が並ぶだけなので意図を推し量ることはできませんが、情報戦の観点では、今後、オリジナルの情報を発信し、それをSNSや掲示板に載せて拡散させることが考えられる。すでにコピー記事がストックされているので信用される可能性が高い」 今なお無法地帯のネット空間。詐欺であれ、フェイクニュースであれ、手口はますます巧妙になっている。
「週刊新潮」2024年11月21日号 掲載
新潮社