星稜の新2年生・能美誠也に見た「勝てる捕手」の資質 センバツからの新ルールにも堂々
2点を勝ち越した9回裏には、3番手右腕の道本想(2年)が一死二、三塁という大きなピンチを招いた。だが、この場面で能美は2ストライクから3球勝負を要求。道本が大胆なリードに応えて空振り三振を奪うと、能美はパンチを放つような仕草で喜びを表現した。 試合後、この場面について聞いた際の能美のコメントが振るっていた。 「腹をくくっていました。この場面で追いつかれても、自分のせいではないので」 そう言いきったあと、少し過激な発言だと思ったのか、能美は「(接戦になったのは)周りが打てなかったのが原因ですから」とつけ足した。 4月で高校2年生になる16歳。それでも、聞かずにはいられなかった。将来、どんな捕手になっていきたいのか、と。 「キャッチャーとして打って目立つ、ランナーを刺して目立つというより、陰でピッチャーを支えたり、ポジションを動かしたりして地味に1個1個を重ねていけるキャッチャーになりたいですね。それが結果的に自分の手柄になると思うので」 近年の星稜は山瀬慎之助(巨人)、内山壮真(ヤクルト)と好捕手が続いたが、能美はその系譜に連なる存在になるだろう。「勝てる捕手」はこの春にどこまで勝ち上がるのか。いくら本人が「地味」を目指しても、その底光りする輝きは隠せそうにない。
菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro