「感情移入して涙がボロボロ出た」 婚活1000本ノック主演の3時のヒロイン福田麻貴が紹介する文庫3冊(レビュー)
「女芸人No.1決定戦 THE W」で優勝後、多方面からオファーされるお笑いユニット「3時のヒロイン」でツッコミを担当する福田麻貴さんがおすすめの3冊を紹介する。
福田麻貴・評「人生で一冊目」
子どもの頃から、知りたいことや悩みが出来ると駆け込み寺のように本屋に赴き、本の中でいつも解決してきました。学校の図書室では伝記や児童向け文学もよく読みました。 しかしあえて人生一冊目を挙げるなら、大学時代に友達に薦められた『ゴールデンスランバー』は、初めて頭を打たれた小説です。文字を追うだけで逃走劇の臨場感が映像を見ているかのように感じられたり、感情移入して涙がボロボロ出たりする読書体験は初めてで、ここから小説の魅力にどっぷりハマることになります。 暗殺犯の濡れ衣を着せられて追われる主人公の青柳、彼を匿い、助けてくれる人々。逃走劇のスリルの先にある人間の温かみや信用の大切さが身に染みます。 印象に残っている登場人物は連続通り魔のキルオ。謎めいていてユーモラスなキャラクターと、不思議な存在感。主人公を手助けするキャラクター全員が魅力的な人物像で愛着を覚えるので、読後はしばらく余韻に浸りました。
『レ・ミゼラブル』も心に残っています。これは私の人生で一冊目の翻訳小説でした。有名ミュージカルの原作でもあるのでストーリーは言わずもがなですが、言語化の幅広さや的確さ、描写の掘り下げの深さに驚きました。表現の仕方が非常に新鮮で、思わず蛍光ペンを引いてしまったページもあります。 善と悪について向き合い続けるジャン・ヴァルジャンの葛藤と逃走劇、革命の激しさ、それぞれの人物の悲劇が繊細に丁寧に綴られていました。 印象に残っているのはファンチーヌとエポニーヌのそれぞれの最期です。救いようのない痛々しい最期がこうも生々しく描写されるか、と苦しくなります。その描写は私の脳に、文章としてでなく映像として、トラウマのように残っています。