水族館「あわしまマリンパーク」を再オープンさせた男。その挑戦と『ラブライブ』愛
■"同志"の息子も正社員として入社 何より、長らくこのあわしまマリンパークを共に愛してきた息子が従業員として加わり、身を粉にして再建に取り組んでいることも、今村氏が前を向かざるをえない理由のひとつだ。 「以前からSNS用の動画の編集を手伝ってもらったりしていたのですが、今は正社員として働いてもらっています。大した給料も払えないのに僕のワガママを支えてくれるわけですから、弱音を吐いてはいられないですよね。 利益を出せるようになるまでにはまだ時間が必要でしょうから、今は放送作家の仕事をガンガン増やして、少しでも売り上げを補填できるよう頑張っているところです」 勝算がないわけではない。鍵を握るのは、淡島という島が持つポテンシャルだ。 「現状では島のごく一部分しか利用していませんが、僕らは島全体を使うことができる権利を持っています。だから例えば、釣りスポットを開放すれば駿河湾の豊かな漁場を求めて多くの釣り人が殺到するでしょうし、キャンプ場やサウナを整備すれば多くのニーズを呼び込めるはず。 湧き水だって湧いているし、島内にある淡島神社をパワースポットとして売り出す手もある。やれることはたくさんあるんです」 ちなみに、この日は名物のイルカショーを見物させてもらったが、人工のプールではなく天然の海を用いたショーは全国でも珍しい。確かにポテンシャルは小さくないように思える。 「何より、このあわしまマリンパークから淡島神社まで続く道は、アニメの中で果南ちゃんが走った道ですからね。今はまだ少し荒れていますけど、ここもちゃんときれいにして、聖地として整えたいと思っています」 ラブライブ愛をのぞかせることも忘れない今村氏。そのひたむきな熱意と行動力が今後のあわしまマリンパークに何をもたらすのか? 挑戦は始まったばかりだ。 ●今村クニト(いまむら・くにと)1970年2月10日生まれ、兵庫県出身。放送作家、お笑い芸人。お笑いコンビ「ピーピングトム」のツッコミ担当。放送作家としての担当番組には『THE TIME,』(TBS系)などがある。2024年4月、あわしまマリンパークの運営会社の株式を取得し、社長に就任 取材・文/友清 哲 撮影/榊 智朗