地味すぎる鯛めしをジャコ天が救った! 生姜醤油が食の推進力になる 久住昌之・するりベント酒
【久住昌之 するりベント酒】 スーパーで「鯛めし弁当」を買った。 鯛めし弁当、というものは過去にも別の店で何度か買ったことがある。好きだ。 しかし記憶にある鯛めし弁当は、おかずが少なくて、白いごはんの上に全面的に鯛の、なんだろう、調理して細かくほぐされた鯛の白身を敷き詰めたものが多かった。 だから、一見、変化に乏しい弁当に見える。色もほぼ白いので、おかずというものが無いように見える。ところが、箸で鯛とごはんをごそっと取って食べると、これが意外にもおいしい。見た目地味でも、さすが鯛。と思うものであった。鯛めし、とは確かによく言ったのものだ。ごはんに鯛を混ぜ込んで無いところがいい。鯛単体のおいしさも味わえるからだ。 だが、名前につられて買ってきたこの鯛めし弁当、家に帰って蓋を開けてみたら、これだ。一見、おかずが多い。おかずが弁当面積の50%を超えている。そんな鯛めし弁当は初めてだ。まあおかずは多くて悪いというものではない、割り切っていこう。 過半数割れした弁当保守の鯛めし部分に目をやる。 野沢菜的な緑が混じっている。細切り人参的なオレンジがちらほらしている。これ、鯛めしに必要だろうか? 過去の鯛めし経験では、こういう混ざりものは一切なかった。その潔さがむしろ特徴と思われた。白に白で、色味がない見た目から、あの旨味が口の中で現れるのがよかった。 ボクはおかずを差し置いて、鯛めし部分を食べてみた。口に入れ、ゆっくり噛んで黙って味わった。 「・・・・」 味、薄し。見た目通り、鯛の味がせず、いや微かにするかもしれないがそれを青菜の味が邪魔している。 もう一口食べた、青菜をよけて。 ムムム、鯛の味が全然しない。それはないだろう。 もう一度見たら、端の方は鯛の身がのっていないのだった。うーん。まあ、税抜き498円だ。しかたないかもしれない。 ここでようやく落ち着き、おかず群に目を向ける。かぼちゃ、人参、こんにゃくの煮物か。卵焼きか。パンチ無えな。さらに煮豆か。おかずになんねぇぞ。昆布かぁ。とろみのかかったのは、厚揚げだ。うーん、好きだけどな。どれも勢いがない。てか覇気がないな。 しかたなく、隅の丸いつくね状のものを食べる。あ、なかなか旨い。でも力強いおかずはこいつだけ。あと皆おとなしい。