センバツ甲子園 熱望の2校歓喜 熊本国府、創部18年目初出場 神村学園、9年ぶり6回目 /熊本
第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の出場32校が26日に発表され、熊本市の熊本国府と鹿児島県いちき串木野市の神村学園の出場が決まった。熊本国府は春夏通じて初の甲子園、神村学園は9年ぶり6回目のセンバツ出場だ。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 熱望していた「春」の訪れに、両チームの選手らは全身で喜びを表現した。大会は3月8日に組み合わせ抽選会があり、同18日に阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕する。 ◇熊本国府 勝負強さ強み 創部18年目の熊本国府に新たな歴史が刻まれた。谷口晋平校長から出場決定が伝えられ、「おめでとう」と祝福されると、選手たちからは「ヨッシャー」と歓声が上がった。 熊本勢のセンバツ出場は、第91回(2019年)の21世紀枠で出場した熊本西以来。一般枠での出場は、第89回(17年)の熊本工と秀岳館以来となる。 チーム一丸の勝負強さが最大の強みだ。公式戦の逆転勝利も多い。昨秋の九州地区大会の熊本県予選準決勝、ルーテル学院戦が象徴的だ。終盤まで1―4の状況で、八回に同点に。九回は2死から4長短打で4得点して逆転勝利した。九州地区大会でも他県の強豪を次々破り、初優勝まで駆け上がった。 右の坂井理人投手と左の植田凰暉(ごうき)投手(ともに2年)の2枚看板。坂井投手は9試合で58回を投げ、2試合で完投した。防御率2・17で安定している。植田投手は7試合で25回を投げ、1試合で完投した。防御率1・80で坂井のリリーフとしての登板も多く、試合の流れを相手に渡さなかった。 チーム打率は公式戦10試合で3割2分1厘。本塁打は3本と派手さはないが、好機を逃さずどの打順からでも適時打が出る勝負強さがある。部員61人の全員が熊本県出身だ。 坂井投手は「守備を信頼している。今までと変わらず、打たせて取る野球をしたい」、一塁手の中嶋真人選手(2年)は「一から気を引き締めて、あの舞台でベストコンディションでプレーしたい」。野田希主将(2年)が「ここからがスタート。目標の甲子園ベスト4に向け、練習を頑張っていかないといけない」と声を掛けると、選手たちは表情を引き締めた。【野呂賢治、中村園子】 ……………………………………………………………………………………………………… ◇九州地区大会県予選◇ 2回戦 11―2 天草工 3回戦 11―1 岱志 準々決勝 4―3 鎮西 準決勝 8-4 ルーテル学院 決勝 5―4 九州学院 ◇九州地区大会◇ 1回戦 6―2 飯塚 準々決勝 7―6 大分舞鶴 準決勝 7―1 神村学園 決勝 5―1 明豊 ◇明治神宮大会◇ 1回戦 2―6 関東一 ……………………………………………………………………………………………………… ◇学校プロフィル 1941年、熊本商工会議所が設立した熊本女子商業学校が前身。48年に熊本女子商業高校となった。94年に校名を現在の熊本国府高校に改称し、95年から男女共学に。学校法人泉心学園が運営する。 校名は、奈良・平安時代に現在の校舎付近に肥後の国の「国府」があったことに由来する。これまでの卒業生は4万人を超える。野球部の創部は2006年。 建学の精神は「人間全体を正しく成長させる全人教育を基盤として、身体的、情操的、知性的、社会的、四面の調和的発達を遂げしめ、真に役立つ人材を育成する」。校訓は「礼節 創造 自立」。 ……………………………………………………………………………………………………… ◇神村学園 目標は日本一 「昨夏の4強でセンバツに出場できるのは神村学園だけ。経験を生かしつつ新しい風を吹かしてほしい」。一報を受け、神村学園の神村慎二理事長はユニホーム姿で大喜びする選手らを激励すると、主砲の正林輝大(こうだい)選手(2年)は「昨夏を超えられるよう、調子の良い時だけでなく、ミスした時も支え合っていけるチームにしたい」と応えた。 昨夏の甲子園4強だが、道のりは楽ではなかった。昨秋、国民体育大会(国体)が鹿児島であったため、九州地区大会県予選が始まったのは例年より1カ月ほど早い8月22日。他チームを圧倒して優勝したが、その後は国体が旧チームで、九州地区大会が新チームで戦うなど目まぐるしい日程を強いられた。小田大介監督(41)が「旧チームの遺産で挑むしかなかった」と打ち明ける。 それでも昨夏のメンバーが多く残った打線は力強い。高打率の入来田華月選手(1年)や昨夏もレギュラーの一人、増田有紀選手(2年)が出塁し、前主将の弟・今岡拓夢選手(1年)、昨夏も4、5番だった正林選手、岩下吏玖(りく)選手(2年)で還す。下位打線にも打撃で昨夏のレギュラーで4強進出に貢献した上川床勇希選手(同)が控える。 投げては左腕の今村拓未投手(同)が最速141キロのストレートと多彩な変化球のコンビネーションでエースに成長。早瀬朔投手(1年)らも力を付けている。 チームの目標は日本一。今村投手は「冬の間、走り込みやウエートトレーニングで鍛え抜き、体重も5キロ増えて球が伸びるようになった。絶対に打たせない」と自信を見せた。発展途上のチームが完成形に達した時、その悲願に手が届く。【梅山崇】 ……………………………………………………………………………………………………… ◇九州地区大会県予選◇ 2回戦 11―1 樟南二 3回戦 10―2 尚志館 準々決勝 12―6 国分中央 準決勝 11―1 川内商工 決勝 8―2 れいめい ◇九州地区大会◇ 1回戦 9―1 沖縄尚学 準々決勝 10―0 日南学園 準決勝 1―7 熊本国府 ……………………………………………………………………………………………………… ◇学校プロフィル 1956年に「串木野経理専門学校」として発足。「串木野商業女子高校」、「串木野女子高校」を経て90年に現在の「神村学園高等部」になった。97年から男女共学。生徒数は1350人。モットーは「やかぜ」(やればできる! 必ずできる! 絶対できる!)。 野球部は2003年に創部。初出場した05年のセンバツで野上亮磨投手(元プロ野球西武、巨人)らを擁して準優勝。23年夏の甲子園では4強に進出した。今春のセンバツで春夏計12回目の甲子園出場となる。 女子駅伝部は23年末の都大路で優勝。女子硬式野球部、女子ソフトボール部、女子サッカー部などに全国制覇経験があり、男子サッカー部も強豪として知られる。