ノーベル賞とイグ・ノーベル賞を両方受賞した人っているの?
10月6日の医学生理学賞発表に始まった今年のノーベル賞ウイーク。翌7日に発表された物理学賞では、「青色発光ダイオード」の研究により赤崎勇名城大学教授、天野浩名古屋大学教授、中村修二米カリフォルニア大学教授が受賞、日本中が沸きたちました。日本人のノーベル賞受賞は一昨年の山中伸弥京都大学教授(医学生理学賞)に続く20、21、22人目。物理学賞は2008年に益川敏英名古屋大学特別教授ら3人が受賞して以来の6件目。化学賞と並ぶ「日本のお家芸」の感があります。
ノーベル、イグ・ノーベル両賞受賞者は現在までで1人だけ
そういえばノーベル賞発表に先立つ9月18日、北里大学の馬渕清資教授が受賞したイグ・ノーベル賞も物理学賞。「バナナの皮の滑りやすさ」を摩擦係数によって実証した研究成果は広く話題を呼びました。日本人のイグ・ノーベル賞受賞は8年連続20回目で、こちらはもう常連です。 人類に資する顕著な功績に対して贈られるノーベル賞と、人々を笑わせ考えさせる独創性が評価されるイグ・ノーベル賞。「これまで両方受賞した人はいるだろうか?」と調べてみたら、いらっしゃいました。2010年に「炭素新素材グラフェンに関する革新的実験」でノーベル物理学賞を受賞した、ロシア生まれのオランダ人物理学者のアンドレ・ガイム博士。2000年に「カエルの磁気浮上」でイグ・ノーベル賞も受賞しています。現在まで唯1人の両賞受賞者、気になる研究のさわりをご紹介します。
ノーベル物理学賞受賞「炭素新素材グラフェンに関する革新的実験」
ガイム博士が2004年に発見した「グラフェン」は、厚みが原子1つ分(0.38ナノメートル)の炭素シート。300万枚重ねてやっと1mmという超極薄ながら、強度は鉄の100倍で弾性は6倍の「強くてしなやか」な理想的性格。透明で電気も熱もよく通すため、半導体やセンサー、タッチパネル、太陽光電池などへの応用はもちろん、量子物理学やバイオテクノロジーにも革新をもたらす可能性に満ちているそうです。現在、世界中の企業が応用研究とその実用化に取り組んでいるのだとか。 「神が作った材料」とも「世界を変える素材」とも呼ばれるグラフェン。その存在は50年以上前から知られており、理論的な研究例もありましたが、「どうやって取り出すか」はほぼ手つかず。「鉛筆の芯などに使われるグラファイトから1層だけ剥離すれば」と考えても、「物性の不安定さから困難」というのが常識でした。 ところが、ガイム博士とパートナーのコンスタンチン・ノボセロフ博士の2人は、グラファイトの塊にセロファンテープをくっつけ、剥がしたものをシリコン基板に押しつけることを繰り返して「世界一薄い素材」の抽出に成功。「驚嘆すべき容易な方法!」と称賛され、「剥がして遊んでいるうちに、ほとんど偶然に」という説もありますが、まさにコロンブスの卵的発見でした。