【坂口正大元調教師のG1解説】胸熱のエスコート、努力続けた津村騎手お見事/ヴィクトリアM
<坂口正大元調教師のG1解説 トップ眼> <ヴィクトリアM>◇12日=東京◇G1◇芝1600メートル◇4歳上牝◇出走15頭 競馬は筋書きのないドラマです。ですが、出走していない馬は絶対に勝てません。当たり前のことを言いますが、それが競馬です。今回なら15頭の出走馬に名を連ねることが、勝利への第1歩なのです。騎手ももちろん、G1に乗らなければG1は勝てません。津村騎手がインタビューで話した「諦めちゃいけない。G1に乗れるように努力していた」というあの思い。胸が熱くなりました。 テンハッピーローズを見事にエスコートしました。スタートを決めて、ポジションは中団の外。前にも外にも馬がいない、ストレスの少ない位置でゆったりと追走させました。前後半800メートルずつのラップは45秒4-46秒4。やや速めの平均ペースですから、絶好の位置でした。直線では残り300メートルあたりまで追い出しを我慢。一瞬の脚を最大限に引き出しました。ベストは1400メートルで、切れるものの使える脚は一瞬という特長を過去の騎乗でつかんでいたのでしょう。21年のキャリアを感じさせる、さすがの騎乗でした。 私はよく、努力している人にしか運は向かないと書きますが、努力しても周りに恵まれなければ勝てないのも競馬です。走る馬に乗らなければ、なかなか勝つのは難しいものです。津村騎手は今回の勝利でまた認められたと思いますし、流れも変わるでしょう。 1番人気のマスクトディーヴァは3着でした。直線で前が狭くなるシーンがあり、モレイラ騎手がブレーキをかけました。よく3着まで盛り返しましたが、不利を受けることがあるのも、また競馬です。マイルなら牡馬が相手でも互角に走れる馬だと思いますし、次戦以降に期待します。 ナミュールは8着。一抹の不安だったゲートで出遅れてしまいました。それでも、もっと伸びていい馬だと思いますし、海外遠征帰りで調整に難しいところがあったのかもしれません。(JRA元調教師)