〈かつてはあのチャールズ・チャップリンも〉アメリカ入国が困難になる日、トランプの「アメリカ史上最大の不法移民の大量送還」におびえる移民たち
スプリングフィールドのハイチ系住民の中には、クレジットカードを持たないものやインターネットアクセスのない者もおり、支援団体に、スプリングフィールドから出るバスのチケットや航空券の購入を依頼するものも多い。行先は様々で、法執行機関の目を逃れて紛れ込めるという理由からシカゴやボストンなどの大都市を選ぶものもいる。米国を諦めカナダや南米に脱出しようとするものも多い。 支援団体関係者は、現行法ではTPS制度が廃止されても、法廷審問が必要でそれには何カ月も、時には何年もかかるからある日突然送還されるようなことにはならないと説明しているが、脱出の流れはやまないという。
「ギャングを摘発する」と豪語するトランプ
全米の注目を集めたもう一つの都市がコロラド州オーロラ市である。コロラド州は移民に優しい州として知られるため、22年だけで数万人が州内に流れ込んだ。州都デンバーのベッドタウンとして発展したオーロラにも多くが移り住んだ。 オーロラが全米の注目を集めるきっかけは、FOXニュースが、オーロラの団地の中を銃で武装したベネズエラのギャングであるトレン・デ・アラグア(TDA)とみられる一団が移動する動画を放送したことであった。トランプはこの件をとらえ、ハリスとの討論会で、オーロラはベネズエラからのギャングに乗っ取られたと発言すると、全米の注目がこの都市に集まった。市長は、市全体が乗っ取られているのではなく、幾つかのビルだけであると釈明に追われた。 トランプは、10月の選挙期間中にオーロラで集会を開いたが、その壇上には、オレンジ色の囚人服を着た男性の逮捕直後の巨大な顔写真がおかれていた。その写真には、「占領された米国、TADのギャングメンバー」と書かれていた。 トランプは壇上から、もし再選されれば移民のギャングを摘発する「オーロラ作戦」を実施すると宣言した。そして、その作戦は、1798年の敵性外国人法に基づくと述べた。これは戦時において敵性外国人を拘束、追放する追加権限を大統領に与えるものである。 ウィルソン大統領とトルーマン大統領によって戦争後に用いられた例もあるが、基本的に戦時を想定したものである。そのためトランプ大統領が1月から自由にこの法律を使えるとの考えに疑問を呈する専門家も多い。ただ、これも連邦最高裁の解釈次第なのでトランプがこれを用いた場合、認められる可能性も十分にある。 オーロラでは非合法移民たちの反応はまちまちにみえる。8年前にトランプが大統領に就任した時も、選挙運動中は大規模な移民の追放を唱えていたものの、何も起こらなかったから、今回も何も起こらないという者、犯罪者だけが対象になるだろうから、まじめに暮らしている者は大丈夫と考える者も多い。摘発されたら母国に帰れば良いというものもいる。一方で自国が混乱状態で、帰国するとすぐさま命の危険にさらされる可能性がある者は怯えている。