地元の味覚が楽しめる“役所メシの旅” ── 品川区役所「品川めし」
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「社員食堂」がある会社のように、市役所や区役所といったお役所にも食堂がある。うどん・そばやカレーといった定番メニューに加えて、地元の食材や名物グルメが味わえる食堂も。そんな地元の味が楽しめる役所の食堂を探訪する当連載企画。第2回は、東京都品川区役所の食堂。同区の歴史に思いをはせる「品川めし」を味わってきた。
品川区役所の玄関をくぐってロビーへ。このロビーのあるフロア、実は3階なので、2階にある食堂へ行くには、1つ下の階に降りねばならない。食堂入口横の食券販売機の前に立つ。購入するのは、本日楽しみにしていた「品川めし」(500円)だ。 区によると、品川めしはもともと、東京湾でたくさん獲れていたシャコを使った丼ものだった。正確なレシピは伝わっておらず、下煮をしたシャコをご飯とともに炊き上げたり、砂糖じょうゆで煮付けたシャコを丼飯に載せたり、卵とじを載せたりしていたらしい。その後、シャコが獲れなくなると、代わりにアナゴを入れた丼も品川めしと呼ばれるようになったという。 しかし、窓口で出された品川めしは、丼ものではない。黒い皿の上に、オムライスのような品が載せられていた。黄色い薄焼き卵の上には、青ノリが振りかけられていたので、オムそばに見えなくもない。卵焼きの表面にある丸っこい焼印は、区のキャッチコピー「わ!しながわ」のロゴマークだという。
現在の品川めしは2代目にあたる。改修前の食堂で提供されていた初代の品川めしは、白飯の上に煮アナゴなどをのせた丼物だったとか。2代目は、新時代の品川めしとして、2月の食堂リニューアルオープンとともにデビューした。食堂を運営する日京クリエイトによると、1日に10食前後を用意するという。 薄焼き卵をおそるおそるぺろんとめくってみると、レンコンなどの野菜が入った五目ちらしの上に、甘辛く煮られたとわかる薄褐色のアナゴが複数枚載っていた。中身を確かめたあと、めくれ上がった薄焼き卵をそっと元に戻す。 いただきます、とささやいたあと、黒い皿と黄色い卵の鮮やかなコントラストを目で楽しみつつ、薄焼き卵の表面に箸で切れ込みを入れ、卵と五目ちらしのブロックを作って口にほおばる。薄焼き卵の香ばしさとさわやかな酢飯、そしてちょうどよい甘辛さのアナゴの味わいが、舌の上を次々と通り過ぎていく。ときおり登場するレンコンのシャキシャキとした歯ごたえも楽しい。