トランプ氏の利下げ圧力で円安修正期待 日銀には朗報? 「政治と一緒に迷走」の懸念も
トランプ前米大統領の再選が決まった直後に開かれた7日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、連邦準備制度理事会(FRB)は事前予想通り0・25%の利下げを決めた。市場では「ドル安志向」とされるトランプ氏が今後、FRBへの利下げ圧力を強めるとの見方がくすぶる。過度な円安が修正されれば、利上げを進める日銀にとっては余裕が生まれるが、円が急伸すれば難易度が増す恐れもある。 「金融政策は今後もデータに基づいて決定される」。会合後の記者会見で、パウエル氏は今後の方針について言質を取られないように慎重に言葉を選んだ。 8日の東京外国為替市場で、円はドルに対して強含んで推移した。午後5時時点は1ドル=152円台後半。日米金利差の縮小を意識した投資家がドルを売って金利上昇が見込める円を買う動きを強めたためだ。 トランプ氏の再登板で、今後は円高が進みやすくなるとの見方がある。国内製造業を重視するトランプ氏がドル安志向であることはよく知られた話だ。選挙期間中もホワイトハウスがFRBに関与する仕組みの導入を訴えるなど、利下げを求める可能性は高い。 一方、トランプ氏が掲げる関税強化や大型減税が実現すれば、インフレが再び加速する恐れがある。トランプ氏がこれを放置することは考えにくく、ある時点でFRBに利上げを容認することも想定される。 ピクテ・ジャパンの市川真一シニア・フェローは「それでも物価を加味した日米の実質金利を比べると、円高が進む可能性がある。日銀の金融政策はこれまで以上に難しくなる」との見方を示す。 急激に円高が進めば、その影響を受ける輸出産業に配慮して、利上げを休止したり、逆に金融緩和に戻る必要が出てくる可能性がある。大規模金融緩和からの出口戦略を託された植田和男総裁の手腕が問われるが、その植田氏は発言のブレも目立ち、政府の影響を受けやすいとの見方もされている。 市川氏は「政府・与党もトランプ氏とどう向き合うか定まっていない。植田氏は政治と一緒に迷走しかねない」と危惧している。(米沢文)