老朽化する高速道路を救え! 29年に世界20兆円市場、次世代交通インフラ「スマートハイウェイ」ってなんじゃらほい?
リアルタイム監視で異常察知
スマートハイウェイが推進される別の背景には 「高速道路の老朽化」 がある。NEXCO東日本は、スマートメンテナンスハイウェイというプロジェクトを実施している。このプロジェクトでは、IoTやドローン、ロボットなどを活用してデータを収集している。 収集したデータに基づいて、設備の点検や調査、分析、評価を行い、補修や危機管理、交通管理の効率化を目指している。この背景には、高速道路インフラの老朽化と人口減少に伴う維持管理技術者の質や量の確保が課題となっていることがある。 さらに、ソフトバンクは橋梁の健全性監視に関する実証実験も行っている。5Gと接続された加速度センサーを橋桁や橋脚に複数設置し、微小な振動を監視している。実験の結果、計測した振動特性を「リアルタイム」で監視できることが確認された。 これにより、災害などが発生した際に、橋桁や橋脚の異常を遠隔地からリアルタイムで検知できる。老朽化が懸念される施設を監視し、異変を即座に察知することが可能になる。
年20%成長、進化する交通管理
スマートハイウェイには多くの可能性がある。高度な交通管理や渋滞監視・管理システムが含まれており、これらが統合されることで交通管制や制御、誘導システムに新たな可能性が生まれる。そして、この高度な交通管理システムは、高速大容量通信である5Gによって支えられている。 さらに、高速道路が直面している深刻な状況もスマートハイウェイを後押ししている。人や物資の移動を安全かつ効率的に実現するために、高速道路網は構築されてきたが、今、老朽化の問題が浮上している。また、気候変動による自然災害や解消されない渋滞、大規模な交通事故による損失が増加しているのも事実で、これらは世界中の高速道路で共通の問題となっている。 こうした状況がスマートハイウェイの普及を促進し、市場は注目を集めている。6000社以上の企業と提携するインドの調査会社モルドール・インテリジェンスによれば、スマートハイウェイの市場規模は2024年には558億ドルに達すると推定されている。そして、2029年までには 「1379億8000万ドル(約20兆6000億円)」 に達すると予測されており、この期間中の年平均成長率は19.85%になる見込みだ。 さまざまな新技術や他分野が関連するスマートハイウェイは、日本を再び活性化させる大きなプロジェクトになるかもしれない。
喜多崇由(フリーライター)