元花組トップ・柚香光の宝塚退団後初コンサートが開幕、ボーダーレスな無限の魅力を放つ
15年以上にわたる男役人生をまっとうし、5月に宝塚歌劇団を卒業した元花組トップスター・柚香光(ゆずか・れい)が、退団後初のステージ、『Ray Yuzuka 1st Solo Concert「TABLEAU」』を開催。9月11日、「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」(大阪市北区)での初日公演の前に、公開ゲネプロをおこなった。 【写真】星風まどかが、運命的な出会いを語ったトークも 各シーンを「タブロー(絵画)」に見立てたコンサートは、どの瞬間もフォトジェニックで美しい柚香にぴったり(小林香の構成・演出)。額縁風のセットが斬新で、オープニングからこれらのセットを使った映像でも楽しませる。そして生バンドの演奏にのって、柚香が黒×ゴールドのワイルドな衣装で登場。退団から約4カ月、現役時代を彷彿とさせる格好よさで、キャスト全員と「Let Me Entertain You」を明るく届ける。 そこからの七変化は圧巻。「皆さんの心に焼きつく、絵画のような光景が次から次へと続くコンサートになれば」とMCで話した通り、男性ダンサーと歌い踊るクールな振付や、「メロディから尊厳を感じる」という有名なミュージカルナンバー、海外アーティストのようなゴージャスなノリで見せるシーンなどを披露。男役という枠から解き放たれ、柚香本来が持つナチュラルな輝きがグレードアップし、魅力が無限に広がっていくのを感じる。 ゴスペルシンガーを経てミュージカルの舞台などで活躍する塚本直のパワフルな歌声に合わせて踊ったナンバー「Bang Bang」は、幼なじみの男女が「バンバン」とピストルの真似をして遊んでいたところから、関係性が次第に変化していくさまを、ストーリー性のあるダンスで見せる。柚香の茶目っ気とアンニュイな色気が放たれ釘付けに。 ダンスのジャンルは幅広く、あらためてダンサーとしての稀有な実力を見せつける。初挑戦となったのは、花組トップ時代の『DANCE OLYMPIA』で男役として踊り魅了されたところから、柚香自身が希望したという女性のフラメンコの踊り。退団後、本場のスペインまで出向き、現地のロマの演奏に合わせて、振付家・佐藤浩希に柚香ならではの振付をつけてもらったという。舞台には赤いドレスの柚香が現れ、何かを訴えるような、魂を込めたステップを踏み続け、まるでスペインの酒場にいるかのような錯覚に。その姿はどうかコンサートでお楽しみに。 また、大阪公演初日と2日目にスペシャルゲストとして迎えた、元花組トップ娘役・星風まどかとは、宝塚で共演した『巡礼の年~リスト・フェレンツ、魂の彷徨~』より、「巡礼の日々(愛の夢)」をデュエット。金髪ヘアの柚香に「お変わりないですね」と星風が言うと、「襟足が伸びたぐらいかな」と笑う柚香。 ふたりは久しぶりに大阪入りした喜びを確かめ合い、「このドラマシティは初演の『はいからさんが通る』(2017年)で立って以来なので、すごく嬉しい」と柚香が言うと、星風は「そのあたりで観ていました!」と客席を指さすなど和気あいあい。さらに退団公演『アルカンシェル』より「たゆたえども沈まず」を柚香が感慨深く歌い、星風と現役時代のように優雅なデュエットダンスも披露した。 終盤には大きく背中の開いた白い衣装で登場し、8名のキャストとともにOfficial髭男dismの「Stand By You」を熱唱。4カ月ぶりの舞台に立った柚香は、「舞台って本当に尊くて素晴らしい場所!」と喜びをあふれさせた。 大阪公演は16日まで。9月21日から24日までは「東京国際フォーラム ホールC」で上演され、21日・22日のスペシャルゲストに、最初の相手役である元花組トップ娘役・華優希(はな・ゆうき)を迎える。9月28日・29日の御園座公演はライブ配信・ライブビューイングもあり。 取材・文・写真/小野寺亜紀