実は映画と原作で犯人は別!映画『ボーン・コレクター』シリーズ原作の“だまされる快感”を語る(レビュー)
どんでん返しの帝王いやどんでん返しの神様と呼びたくなるのが、ミステリー作家ジェフリー・ディーヴァー。我が家の本棚には彼の小説がずらりと並んでいる。どれもこれも「こいつが犯人だ」と確信するものの、まさかのどんでん返し。ウソ! そう来たか! だまされる度に悔し涙(笑)。でも、だまされる快感にいつの間にかディーヴァー中毒に。単独作品の他にシリーズ物も多いが、リンカーン・ライムを主人公としたシリーズは’97 年から現在まで続いて全16作。その一作目が本書で、珍しくどんでん返しはないが、シリーズ化も当然の面白さだ。 リンカーン・ライムは、世界最高の犯罪学者と言われた元ニューヨーク市警科学捜査部長。捜査中の事故で四肢が麻痺し、動かせるのは首から上と左手の薬指だけとなってしまった。今は経験と知識を生かし、警察とFBIの嘱託顧問の立場だが、実際には世間との接触を断ち、尊厳死の準備をしているのだった。その矢先、骨に執着する殺人鬼ボーン・コレクターによる連続殺人事件が発生。ニューヨーク市警から捜査の指揮を依頼されたライムの寝室が実質的な捜査本部となり、刑事や鑑識課員たちが参集する。彼の手足となって現場で鑑識活動をするのは、赤毛の美人制服警官アメリア。現場に残された証拠の分析で新たな殺人を食い止めようとするライムに、犯罪捜査への情熱と生きる意欲が戻ってくる。だが、ライムと警察をあざ笑うかのように殺人は続く。ボーン・コレクターの真の目的とは……。 映画のライム役はデンゼル・ワシントン。アメリアはアンジェリーナ・ジョリー。原作でライムに付き添っているトムという理学療法士の青年が、映画ではセルマという頼もしい看護師になり、クイーン・ラティファが演じていい味を出している。犯人は原作と違っているが、意外な人物という点は変わらない。 シリーズが回を重ねていくと、医学の進歩でライムの症状が少しずつ改善したり、アメリアと結婚したりと嬉しい出来事も。登場人物が読者と同じように人生を歩んでいくのも、長年のシリーズの魅力だ。 [レビュアー]吉川美代子(アナウンサー・京都産業大学客員教授) 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社
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