「光る君へ」まひろと道長、秘密の廃邸は「源氏物語」から着想 月の雫降り注ぐラブシーンの裏側
まひろと道長が結ばれた第10回では幻想的な演出を得意とする黛りんたろうの手腕が冴えわたった回で、羽鳥は二人のラブシーンの裏側をこう語る。
「第10回では荒廃し木々に侵食され崩れ落ちてしまった屋根の穴から月光が差す……といったイメージ。『源氏物語』の絵巻の世界を思わせるような、セットが1枚の絵画に収まるような素敵な空間にしたいと思っていました。演出の黛りんたろうさんたっての希望で、月から雫が滴って2人を見守っているというような幻想的なシチュエーション。特殊な効果のあるスモークを焚いたり、照明効果をうまく利用して逆光で周りがちょっと見えづらい、おぼろげな雰囲気を美術・照明・特殊効果の三位一体で表現した形です」
ベテランの山内も黛の提案には驚いたといい、「皆にイメージを伝えるときに、まず最初にまひろが横になって見上げたら穴の開いた屋根から満月が見えるようにしたいと。一瞬“えっ!”って(笑)。度肝を抜かれましたが、なるべくそのイメージを表現できるように我々美術は穴の開いた屋根をデザインし、照明さんはそこから月光が降り注ぐようにプランを立てていく。そうこうするうちに、撮影の本番近くになった時に、黛さんが今度は“月の雫を降らせたい”と言い出して(笑)。これが月のかけらなのか雫なのか、何なのかは視聴者の方々の想像にお任せするということで」と、内裏や貴族の邸宅とは一味違う、思い入れのあるセットの裏側を明かした。(編集部・石井百合子)