「光る君へ」まひろと道長、秘密の廃邸は「源氏物語」から着想 月の雫降り注ぐラブシーンの裏側
一方、セットのデザインを担当した羽鳥は身分差のある二人があらゆるしがらみから解き放たれるシチュエーションにしたかったとも。
「まひろと道長が身分差があってなかなか会えないという状況を飛び越えるシチュエーションが欲しいという思いがありました。『源氏物語』を想起させる場面を二人の逢瀬の場所として美しく表現しました。その荒廃感が宮中や貴族の邸宅などの煌びやかなセットとの明確な対比にもなります」
羽鳥いわく、廃邸のシーンのキーワードとなったのが「諸行無常」。まひろと道長の儚い感情を表すものだといい「加えて、この場所に関してはこの世ともあの世ともわからない幻想的な世界観で勝負したいという狙いがありました」とも。
廃邸のシーンで目を引くのが、時に霧が立ち込め妖しい雰囲気が漂う池。山内は「この世ともあの世ともつかない三途の川、極楽浄土への水、あるいは男女の揺らぎの象徴というふうにも取れます」と話し、羽鳥は池のヒントになった場所を挙げる。「平安神宮に東神苑という庭園があるんですけど、そこに泰平閣という建物がありまして、池の真ん中に庭園を見渡せる橋殿があります。まひろと道長が離れたり遠ざかったりという表現においても、ここだったら吉高さん、柄本さんがお芝居としてやりやすいのではないかと」
主演の吉高もセットに池があることに驚いていたが、いったいどのようにして作ったのか。羽鳥は「企業秘密です」と言いながら、「へりを作るんです。5寸角の木材でヘリを作って、特大のビニールシートを敷き、その中に水をためる。(まひろの父・藤原)為時邸の場合は水が透明だったりするので、 その下に岩肌っぽいシートを作って敷いたりとか、下に砂利や岩を入れたりしてそれらしく見せています」と裏側の一部を明かす。 大きな池に見えるが、実は水の深さはたったの15センチ。枝茂川は「何もないフラットな状態から15センチの水を入れて、ちょっと深そうに見せる表現力っていうのはNHKの技術ならではだと思います」と自信を見せる。