年収1000万円が「損」な年収と言われるのはなぜ?
年収1000万円と聞けば、多くの方が高収入であることに、憧れや羨望の目を向けるでしょう。一方で、当事者からは「損な年収だ」などといった声が上がることもあります。そこで、なぜ年収1000万円が「損」と言われるのか、一般的な会社員の方を想定し、考えてみました。
単純に、税率が高く、負担が重く感じられる
年収1000万円が「損」といわれる理由の一つに、「所得税の税率が上がるから」というものが考えられます。 所得税の税率は、5%から45%まで存在します。個別具体的な事情にもよりますが、このうち、年収1000万円の方に対する所得税の税率は20%または23%に該当します。 一方で、「一般的な年収」と呼ばれることの多い、年収400万円から500万円の方は、個別の事情などにもよりますが、所得税の税率は5%ないし10%に該当します。これは、年収1000万円の方の所得税の税率の半分から4分の1程度です。年収1000万円となると、収入が高い分だけ税率も高くなり、思ったほど手元にお金が残らず「損」といわれることがあるのです。 また、日本の税制は、所得に応じた負担をする累進課税制度になっています。多く納税をしたからといって、より優れたサービスや優遇を受けられることは基本的にありません。その点からも、「多く納税したのに損をする」といわれることもあります。
公的な援助が受けられないこともある
年収1000万円となると、受けられる支援が少なくなることがあります。高校無償化制度がその代表例です。例えば両親・高校生・中学生の4人家族であり両親の一方が働いている場合、年収910万円を超えると、高等学校等就学支援金を受けられなくなります。同様に、大学無償化の適用も受けられません。 児童手当についても、年収1000万円となると給付額が減額されます。例えば、世帯内に児童1人のみなど扶養親族等の数が1名の場合、年収875万6000円を超えると、児童手当の額が「特例給付」となり月額一律5000円に減額されます。3歳未満であれば1人当たり月額1万5000円、3歳から中学生までであれば1万円が支給されています。 また、令和2年に給付された「子育て世帯への臨時特別給付」も、収入制限が年収960万円未満であることとされ、年収1000万円の世帯は対象外となっています。 「子育て世帯にとっては、年収が1000万円あっても教育費の工面で大変だ」と言われるのには、こういった理由もあると思われます。