「2025年は西洋の凋落進む」仏学者トッド氏と会見 核保有で自衛も選択肢と日本に提言
■日本には産業国の伝統
トランプ次期政権が志向する保護主義に対しては、「高関税で国内産業を保護するには、外国に頼らずにやっていける労働力が必要。だが、米国には高い能力を持つ技術者や熟練労働者がいなくなった」として、成果に疑問を呈した。
日本についてトッド氏は、「戦後、米国によって西洋に組み込まれた。西洋並みの生活水準や技術力を持つが、世界のほかの国から西洋とは違う存在だとみなされている」と位置付けた。11年の東日本大震災後に訪日した際、「トヨタ自動車の下請けであることを誇る経営者に会った」のが印象的だったと語り、日本には産業国の伝統が残っているとした。安全保障面では、中国が台頭する中、「米国が守ってくれなければどうするか」を考えるべき時に来ているとして、核兵器保有による自衛が選択肢となると訴えた。(パリ 三井美奈)
■エマニュエル・トッド
歴史学者、人口学者。1951年生まれ。76年の著作「最後の転落」で、乳児死亡率の上昇から旧ソ連崩壊を予測。主な著作は「帝国以後」(2002年)など。昨年11月、日本で最新作「西洋の敗北 日本と世界に何が起きるのか」を出版した。