「早くウチの子供に使わせろ!」“大谷グローブ”を巡って教育現場が頭を悩ませるワケ
メジャーリーガー大谷翔平選手から全国の小学校へビッグなプレゼントとして、6万個のグローブが寄贈することが発表されたのは昨年末。実際に2023年の年末から今年の年明けにかけて、全国の小学校には続々と「大谷グローブ」が届いた。野球人口の減少に歯止めをかけたい、子供たちに野球の楽しさを知ってほしいという大谷選手の粋な計らいに、日本中が沸いたのは記憶に新しい。
平等に安全に……は難しい
だが、そのグローブの扱いを巡って今なお“混乱”する教育現場は少なくないようだ。都内の小学校副校長は苦しい胸の内を語る。 「私自身、野球は大好きなので子供たちと一緒に野球ができると喜んだのですが、じゃあ、どうやって子供たちに使わせるのかとなると、これがまた難しい。会議では休み時間に学年ごとに貸し出す案や体育の時間に使うなどの意見も出ましたが、『休み時間に校庭でキャッチボールをしたら大谷のグローブを見たい子供たちが殺到して危ないのではないか』、『体育の授業で使うにしてもグローブがない子はそのとき、何をさせたらいいのか?』など、案が出るたびに“危険性”や“不公平”が出てしまいました」
ヘタな扱いをすると炎上するリスクも
そこで解決策が出るまでは校舎の入り口にある賞状や盾をケースに飾り、まずは子供たちに見てもらうことから始めようとなったのだが……。 「一旦、問題を棚上げする形で“飾る”という結論になったのですが、それをやった自治体や学校がSNSで炎上していたので、これはちょっと安易に対応したらマズいぞとなったんです。とはいえ、何もせず放置したら保護者達からもいろいろ言われますので、とにかく何とかしなきゃと。他校の先生にも状況や使用について聞いたんですが、やはり同じように頭を悩ませていました」
野球をしないコにキャッチボールは難しい
使用方法を巡って紛糾したことには、さまざまな要因があると、この副校長は指摘する。 「まず、今のコは男子でもキャッチボールをしたことがないコのほうが多いんです。ですから、いきなりグローブをはめてキャッチボールはなかなか難しく、誰か先生が付いて見ていなくちゃいけない。それと場所ですね。都内の校庭はさほど広くはないので、休み時間や放課後に自由にキャッチボールをさせるのはやはり危険なんです」 この学校では最終的に体育の時間に、テニスボールを使って大谷グローブでキャッチボールをする時間を設け、全校生徒が一度は使えるようにしたという。 「PTAなどを通じていらなくなったグローブを寄付してもらい、何人か同時にキャッチボールができるようにもしました。今も使い方を巡って教員たちの間で話し合いをしていますが、曜日を決めて放課後に先生の立ち会いの下、キャッチボールができるようにもしていきたいと話しています」