「高学歴の大企業社員」より「ユーチューバーのHIKAKIN」になりたい子どもを親が否定できないワケ
---------- 日本人が当たり前のように受け入れてきた、「いい大学、いい会社、いい人生……」という価値観。しかし、『10年後のハローワーク』の著者である川村秀憲氏は、こうした常識はこれからは通用しないと警告する。AI(人工知能)の登場によって、ホワイトカラーと呼ばれる人々の仕事はどう変わっていくのか。人工知能研究者の立場から近い未来を予測する。 ---------- 【写真】わが子の「考える力」を奪う親たち、その意外過ぎる共通点
「正しい教育」という常識を疑え
国語・算数・理科・社会・英語は、AIがない世界であれば、おそらく今後も大いに必要とされるでしょう。 私たちの多くは長い間そう考えてきましたし、自分自身もそう言われて育ってきました。そして、他人に対してもそのような評価尺度を適用しています。 さらに、子どもをその流れにつつがなく乗せることこそ、「親がしなければならない正しい教育」だと考えてきた感があります。むしろ、それが当然とされた時代が長すぎ、もはや選択する以前に無思考、無批判になっていたのかもしれません。 難しいのは、長い間常識とされてきたこと、とくに教育という人の一生を左右するかもしれないフレームを変えるのは容易ではないことです。 たとえば、中学受験のために子どもを塾に通わせている親がいるとします。親自身も中学受験組で、現在は大手企業でまずまずのポジションにあります。こうした「成功体験」をもとに、子どもが進むべき道を示すのは、ある意味自然な行為です。 AIの時代がやってきたからといって、急に「学校の成績や進学先なんてどうでもいいから、好きなことだけすればいい」とはなりません。それは、自分自身の人生を否定しかねないからです。
世界の企業ではこんな変化が起きている
ただし、今後はその「容易ではないこと」ができる親こそ、子どもを幸せにできるのかもしれません。 私の身の回りには、学歴としては高校中退なのに、ある外資系企業で数千人の部下を抱え、億を超える年収を得ている人がいます。なぜなら彼には、人にはできないことができ、利益を生み出せる判断をしてきた実績があるからです。 そんなのはたった1人の「外れ値」だ、と思うのは自由です。しかし彼の勤務している企業では、現時点での能力だけが問われていて、学歴にお金がついてくるわけではありません。そして彼の下では、それこそ東京大学を卒業した人も働いています。 この状況でもしAIがさらに普及しても、おそらく彼のポジションは安泰でしょう。むしろ危険なのは、「すばらしい学歴」で、その企業でそこそこのポジションと年俸を得ている人です。 AIがあれば部下が半分で済むのなら、その企業も彼も、部下の数や年俸を減らすしかありません。そのとき、「私は東京大学卒です」という履歴は、おそらくなんの威光も発揮しないでしょう。 再度考えてみましょう。このような変化を知ったうえで、もしあなたの子どもが、「なぜ勉強しなければいけないの?」と聞いてきたら、それでもなお「いい大学、いい会社……」と言い切れるでしょうか?