日本ラグビー伝道師として新たな歩み 「小さな巨人」田中史朗、未来へつなぐ想いとは
■すべての人と共に、楕円球に触れて
田中選手の活動はアカデミーコーチだけにとどまらない。この日は、日本代表対フィジー代表戦のパブリックビューイングに特別ゲストとして参加。現役引退後も、ジャパンの応援を続ける田中選手。ステージでは観客の質問に対しこんな一面も見せていた。 田中選手 「(Q.昔から涙もろかった?)山口先生が恩師なので、あの人は常に泣いてましたね。だからこそ、言い方ちょっと失礼かもしれないですが、皆様のおかげです。これだけ涙を流せるのは。ラグビーだけを一人でやっていたら、絶対ここまで泣いていなかったです」 ワールドカップで勝てず低迷し、イベントにも人が集まらなかった頃を思い出したのか、大勢のファンが集まってくれた会場を見て、田中選手の目から思わず涙がこぼれた。 田中選手 「シンプルに言えば『ラグビー人口が増えてほしい』のが一つですね。年々ラグビー人口は減っていますし、人口が減ることは世界に勝つチャンス減ってしまうということなので。しっかりラグビー人口、そしてラグビー以外のスポーツにも興味を持つ子どもたちが増えれば、日本のスポーツとして、スポーツ国として、活性化するんじゃないかなと思っています」 高校生男子のラグビー競技人口を比較すると、過去20年でその数は半分近くまで減少している。ラグビーブームは起きたが、競技人口増加に結びついていないのが現状だ。 田中選手はこの日本ラグビー界の危機をいち早く察していた。だからこそ実際に自分がさまざまな場所に足を運び、普及活動を行おうと決めていたという。 パブリックビューイングに来たファンと一緒に、田中選手自身が主導して「ラグビー体験会」を実施。子どもから大人まで、参加したすべての人と共に、直接楕円球に触れ合うことが最大の普及活動となる。 田中選手 「すごく楽しいですね。皆さんがラグビーボールを触ってくれて、初めて触る方が多かったので。ボールを触って風船を割って、喜んで頂いている笑顔を見るのは、こういう活動をしている価値があると思いました。すごく嬉しかったです」 すべては、今後の日本ラグビー発展のために。ラグビーというスポーツの素晴らしさを伝え続ける田中選手。イベントの最後には、楕円球に初めて触れた参加者たちにメッセージを送った。 田中選手 「本当に一度で良いので、ラグビーボールに触ってラグビーというスポーツを肌で感じてもらいたいです。ラグビーをしなくても良いので、スポーツの素晴らしさを知っていただければ、何か自分達の人生に新たな風というか、楽しいことが出てくると思うので。スポーツをこれからも愛してほしいなと思います」 日本ラグビーの未来のために積極的に普及活動を行う田中選手。その情熱は、これだけにはとどまらない。草の根のラグビー普及活動は続く。