【パレスチナ・ガザ】100万人以上が住む南部で市街地戦が迫る…「地上侵攻」で全土が戦火に包まれる
地獄の門が、再び開いた。 日本時間12月1日午後2時ごろ、約1週間にわたり休戦状態だったパレスチナ・ガザ地区での戦闘が再開された。 【観覧注意】父親の遺体にキスする子供、病院は死傷者で溢れかえり…「地上侵略」緊迫の現地写真 「イスラエルとハマスは人質交換のために11月24日から休戦状態に入りました。イスラエルからは刑務所に収容されていた240人が、ハマスからは外国籍の人質も含めた105人が解放された。しかし、イスラエル首相府は『ハマスは停戦合意を破り、人質女性全員を解放する義務を果たさず、さらにロケット弾による攻撃を行った』と発表。12月1~2日にかけてガザ地区全域の400ヵ所以上を攻撃しました。 ガザ地区の保健当局によると、1~3日までに316人が死亡、664人が負傷したといいます。10月7日の開戦以来、同地域での犠牲者は1万5899人を数え、負傷者は4万2000人を超える。しかも死者のうち、約70%は女性と子供です」(現地で取材を行う日本人特派員) 戦闘再開にあたり、イスラエル首相府は残る137人の人質全員の解放と、ハマスの壊滅を掲げた。 そして12月2日――。ネタニヤフ首相(74)は「地上侵攻なしに目標を達成することは不可能」として、ガザ地区南部への侵攻を開始した。従来行われてきた北部への攻撃に加え、戦火は全域に広がろうとしている。国際ジャーナリストの山田敏弘氏が、新局面を解説する。 「開戦以来、イスラエルはハマスの攻撃拠点があるとされる北部を中心に攻撃してきました。イスラエル軍の最新発表によると、全地域で800ヵ所以上あるとされる軍事用トンネルのうち、500ヵ所を破壊した。そこで、拠点が多く残る南部への攻撃に切り替えた。また同地域にはハマスの最高指導者ヤヒヤ・シンワル氏(61)が潜伏しているとの情報もある。これも戦局が南部に動いた大きな要因でしょう」 南部には戦火を逃れるために避難民が押し寄せており、中心都市ハンユニスなどには10月時点で100万人以上が滞在している。さらに南部の国連関連施設には95万人を超える避難民が収容中だ。 「イスラエル軍は避難地域を書いたビラを撒(ま)いたり、ネット上で案内を出していますが、接続環境が悪いうえに、避難指定先への攻撃が報じられるなど混乱しています。民間人の退避がうまくいかないなか、地上侵攻計画だけが着々と進められている。そんな状況で行われる市街地戦では、かなりの犠牲者が出るでしょう」(現代中東政治に詳しい慶應義塾大学法学部・錦田愛子教授) 激しさを増す戦闘の裏には、支持率低下にあえぐネタニヤフ首相の思惑も蠢(うごめ)いている。錦田教授が続ける。 「かつては治安の確保により、『ミスターセキュリティ』の異名を取ったネタニヤフ首相ですが、その国防上のミスで今回の悲劇を招いてしまった。現在の支持率は2割台にまで急落しています。彼としては、人質奪還などの結果を出して支持率を回復したい。顕著な戦果をあげるまでは、戦闘継続に固執するでしょう」 錦田教授も前出の山田氏も「ハマスの継戦能力は、維持できても来年1月までだ」と分析する。補給路も断たれつつあり、年明けには備蓄が底を突くと考えられる。 一見すると、これにより戦争終結に繋がるように思えるが……。一方で〝最悪のシナリオ〟を招く可能性もある。 「一番恐ろしいのは、追い詰められたハマスが何をするかわからないことです。士気高揚と称して人質の処刑を行うなどすれば、イスラエルもなりふり構っていられない。大規模な掃討作戦が計画されれば民間人の犠牲者はさらに増え、10万人を超すという最悪の事態も考えられます」(山田氏) 一人でも多くの一般市民が戦火から逃れられることを願うばかりである。 『FRIDAY』2023年12月22日号より
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