乙武洋匡氏「表現の自由を逸脱」家宅捜索つばさの党側の主張に反論、供託金の議論が必要とも
作家の乙武洋匡氏(48)は13日夜、インターネットテレビ局ABEMAの報道番組「アベマプライム」(月~金曜午後9時)に生出演し、自らが出馬した4月28日投開票の衆院東京15区補選で、複数の候補者や陣営の街頭演説を妨害したとして公職選挙法違反(選挙の自由妨害)の疑いで、政治団体「つばさの党」の事務所などに警視庁が家宅捜索に入ったことに言及した。 【写真】家宅捜索に「言論行為だ」と正当性主張する黒川敦彦代表 同補選に出馬し落選した根本良輔元候補(29)や、同団体の黒川敦彦代表(45)は選挙戦で、乙武氏らほかの候補者の街頭演説会場に選挙カーで乗り付け、大音量でヤジや主張を続けたほか、他候補の選挙カーを車で追いかけ、交通を妨げるなどして選挙活動を妨害した疑いが持たれている。家宅捜索を受けて黒川代表は13日、取材に「我々は、表現の自由の中で適法なことをやっている」と主張し、今後も同様の活動を行う方針を表明した。 これに乙武氏は「彼らは『表現の自由』と言うが、自由はあくまで他人の自由や権利を侵害しないのが大前提。他の候補者の演説をする自由や、有権者のみなさんがいろんな候補の演説を聞く自由を奪っており、表現の自由は逸脱していると思う」と反論。「正直、身の危険を感じる。彼らは『暴力を振るっているわけではない』とコメントを出していたが、ボランティアの方が蹴り倒されてけがをしており、『暴力を振るってはいない』とは言いがたいのではないか」とも訴えた。自身の落選に、一連の行為が影響したかについては「特に影響があったとは思わない」と答えた。 今回の事態を受け、与野党から罰則強化を含めた公選法改正を求める声が出ているが、乙武氏は、立候補の乱立を防ぐために設けられた「供託金」制度のあり方に言及。「本来、こういった人が立候補できないよう、ある程度供託金で線引きしようということが目的だったと思うが、YouTubeみたいなものが出てきたことで、彼らは簡単に再生回数で(供託金の)300万円くらいはペイできると思う。本来『足切り』をしようと思っていた人が(選挙に)出られるようになり、若い人が、政治に意欲があっても300万円がなくて出られないとなれば、本末転倒。このあたりも議論すべきだ」と訴えた。 つばさ側は、一連の行為についてYouTubeなどで配信しており、動画再生回数を意識したものという見方がある。乙武氏は「彼らなりの正義の手段としてならまだ、2000万歩くらい譲って認められるかなと思うが、『(目的は)ビジネスでしょ』と私を含め多くの人が思っている、ビジネスで、真剣に政治をやりたい人の思いが踏みにじられるのは、ちょっと許しがたいと思う」とも述べた。 現場でつばさ側の質問に答えれば、妨害行為が止むケースもあったが、乙武氏は「大音量でやれば質問に答えてもらえるという実績をつくることの方が、民主主義のあり方として怖い。自分の陣営のことだけを考えれば、その場で適当に答えて追い返す方が楽だったのかもしれないが、それをやれば彼らのやり方を認めることにもなり、それは避けなければと思っていた」と、振り返った。 同補選には9人が出馬し、立憲民主党の酒井菜摘氏(37)が初当選した。