調味料や化粧品として注目…珍しい“黒い麹”作る麹職人 自らの感動を多くの人へ「菌の力を精一杯引き出す」
体が悲鳴を上げたとき出した答えが、「自分が食べるものは自分で作る」ことだ。農業を始め、育てた大豆で味噌作りにも挑戦し、そこで出会ったのが、麹だった。
宮本さん: 「味噌仕込みを重ねるとか、勉強して理解していくにあたって、麹というものが一番の要だというところに気づきました」
製造元から買っていた麹も、自ら作ることにし、試行錯誤を続けて商品化にこぎつけると、甘酒ブームも追い風となりたちまち人気を集めた。そして、2018年に始めたのが「黒麹」だ。発売後、インスタグラムのフォロワーが4000人以上増え、全国から注文が舞い込んだ。
宮本さん: 「一度甘酒が盛り上がりすぎると、少しやっぱり落ち着くので次の楽しみみたいなものを、なんか提供できたらなみたいなところもありましたね」
■48時間かけてようやく黒い麹に 甘酒にするとヨーグルトにも
「種付け」から24時間後の翌日、再び「手入れ」を行う。薄く広げることで、熱がこもらないようにしつつ、酸素をとりこみ、菌が呼吸できるようにする。
宮本さん: 「麹って、なんかちょっと子育てみたいだなと思う時があって。温度が上がらない時は寒がっているところに毛布をかけて温めてあげたりだとか、温度が上がり過ぎている時は手をかけて温度を下げてあげるみたいな感じで。赤ちゃんとかを扱ってるようなというか、なんか本当にそんな感じですね」 さらに4時間後、3度目の「手入れ」。麹は生き物。我が子を慈しむように、何度も手をかけて面倒を見る。
宮本さん: 「黒くなってくるのはもっと後半のほうで、いったん白く菌糸に覆われて、そのあと胞子が黒くなってく」 48時間が経過し、白かった麹が黒い胞子をまとった。ようやく完成だ。
宮本さんが育てあげた「黒麹」は、白い米についた黒麹菌にはクエン酸がたっぷりだ。レモンのように爽やかな酸味が効いている。
醤油と混ぜ、寝かせれば、「しょうゆ麹」に変身し、ドレッシングにも使える万能(ばんのう)調味料になる。
宮本さん一番のおすすめは、ヨーグルトメーカーや炊飯器で手軽に作れる「甘酒」で、ドロッとした見た目とは対照的に、爽やかな味わいだ。