石川祐希(バレーボール男子日本代表 キャプテン)メン・オブ・ザ・イヤー・ベストチーム賞 ──“世界一”に挑んだ歴代最強チームの熱い夏
目標は“世界一の選手”
イタリア戦の直後、石川は監督のフィリップ・ブランと抱き合って涙を見せた。 「試合前に『今までやってきたことは間違いじゃない。お前がいたから、お前がキャプテンだったからここまで来られたのだから、自信持って行け。不安がる必要はまったくないぞ』というふうに言ってもらって。でも結果で恩返しできなかった。その悔しさもありましたし、申し訳なさっていうよりは、情けないというか。ごめん、みたいな気持ちでしたね、あの時は」 望んでいたものとは程遠い結果となってしまったパリ五輪の男子日本代表は、前述の通り石川自身もチームも、波に乗り切れないまま終戦を迎えることになった。52年ぶりの金メダルを本気で目指したチームに、いったい何があったのだろうか。 「周りを見過ぎたというか、いつもだったら気にしないところも気にしちゃっていたというか。逆に、どこかパフォーマンスが上がらない僕に皆が気を遣ってくれて、むしろ遣われ過ぎていたかもしれません。そういう状況を自分が作り出してしまった感じです」 仲間をリスペクトしている、信じているからこそ、お互いに言えない、言いにくい。実社会でも珍しくない光景だ。「チームはキャプテンのようなカラーになっていくものだと思います」というリーダー、石川が率いる日本代表はお互いを尊重するバランス型のチームだ。 「感謝の気持ちと、最後自分が決めきれなくて申し訳ない気持ち」と、心境を明かした石川は、4年後のロス五輪を32歳で迎える。敗退直後に残した「オリンピックの借りはオリンピックでないと返せない」という発言の真意を問う。 「オリンピックとネーションズリーグはやっぱり別物で、オリンピックでないと返せないものはあるな、と改めて思いました。やっぱりロスのオリンピックではメダルを手にしたいですね」 長らく低迷が続いていた日本のバレーボール男子に希望をもたらしてきたキャプテンは、昨季のリーグ王者、ペルージャで新シーズンを迎えることになった。選手として一貫して掲げるのは、“世界一の選手になる”という目標だ。 「イタリアリーグにはオリンピックや世界選手権でメダルを取っているトップ選手たちが多く在籍していますから、世界一の選手になるためには、ここでトップになることが1つの証明になります。その実績がオリンピックにもつながる。ドイツのキャプテン(39歳)もそうですが、年上のベテラン選手が活躍していたのを見て、『ああ、自分も全然いけるな』と思いました。体のメンテナンスや栄養面には他の選手より気を遣っていると自負していますから、自信を深めているところです。長くやりたいなとは思うし、トップを狙える選手でもありたい。どんな年齢でも」 最後に、18年のキャリアを振り返って自己採点をお願いすると、しばしの熟考を経て、きっぱりと答えた。 「60点。残りの40点は年齢を重ねて結果が伴ってくれば満たされるのかもしれません。オリンピックで金メダルを取っても100点にはならない気がします。選手を引退する時に100点に到達するのが理想。結果も大事ですけど、どのようにバレーボールに打ちこんできたかっていうところのほうが評価基準にあるので」