落合陽一が“すし屋”と“うなぎ屋”を作っちゃった 「150年の人類の歴史が凝縮」
東京中央区・京橋のオフィス街、中央通りに面したビルの1階に小ぎれいな飲食店の入り口があります。 【画像】グミを題材にしたアートを発表した落合陽一さん
看板には『鮨(すし) ヌル』の文字。中に進むと、真新しい白木のカウンターが見えてきました。椅子は7脚。常連さんでしょうか、奥からすしを勧める男性の話し声が聞こえてきますが、不思議なことに声の主の姿は見えません。
実はこれ、メディアアーティストの落合陽一さんが個展のためだけに一から作り上げた『架空のすし屋』です。隣には、同じく『架空の鰻(うなぎ)屋』が作られていました。
■個展の開催地・京橋の歴史からインスピレーションを得て制作
東京・京橋で開催中の落合さんの個展『昼夜の相代も神仏(ひるよるのあいかわるわきもかみほとけ)鮨ヌル ∴ 鰻ドラゴン』では、今回のための新作も含めた50点以上の作品が展示されています。開催にあたり落合さんは、この地域の歴史を調べることから始め、この地域に多くあった“すし屋”と“うなぎ屋”をモチーフにする発想が生まれたそうです。 すし屋に入ると話しかけてくる男性の声は、小型カメラで撮影した来場者の服などを映像で分析し、それを読み込んだAIが作った音声がスピーカーを通して、例えば「おや、ストライプが粋だね。おいしいすしを一緒にどう?」などと来場者によって異なる内容で話しかけるそうです。
■江戸時代のうなぎ屋を再現する中 なぜかまな板に電気コードが
隣に設けられた“鰻龍”ののれんをくぐると、そこには“江戸時代のうなぎ屋”が再現されています。まな板の上には、幅広の黒い電気コードにうなぎをさばく時に使う『目打ち』が刺さっています。落合さんは「電気うなぎです。電気(うなぎ)の腹開きですね」と笑いながら話しました。 2つの空間を行き来する展示について落合さんは「展覧会としては探検的、発見的に行ってほしい。展示空間としてのすし屋とうなぎ屋、置かれたものには全て意味があるはずで、“店舗だけどこのオブジェクトはどういう意味でここにあるんだろう?”と一個一個じっくり見ていくと全部にストーリーが含まれているので楽しんでほしい」と、展示会の見どころを語りました。