大人になると思ったように勉強ができなくなるワケ…受験期のように大人の脳でも記憶できるようになる「納得の方法」
大人の学び直しがブームになるなか、「せっかく勉強したことをなかなか思い出せない」「年のせいか記憶力が落ちて勉強がはかどらない」と嘆く人は少なくない。しかし、“一度覚えたことを思い出せない”のは決して年齢のせいではないと、『一生頭がよくなり続ける もっとすごい脳の使い方』(サンマーク出版)の著者である脳内科医・加藤俊徳氏は言う。大人の脳の仕組みと扱い方について、加藤氏に詳しく聞いた。 【マンガ】3500万の住宅ローン組んだ「年収700万夫婦」が地獄を見たワケ
低下しているのは、記憶力ではなく「検索力」
ちゃんと勉強したはずなのに、思い出せない。毎日やっていることなのに、ド忘れしてショックを受ける……。このように、加齢に伴って、中年あるあるの「ここまで出てきているのに思い出せない現象」が増えているという人も少なくないだろう。 大人になるほど、自分の記憶力が低下したように感じてしまうかもしれないが、記憶そのものが消えてなくなることは考えにくい。じつは落ちているのは記憶力ではなく、「検索力」。つまり、記憶したことを引っ張り出してくる力が弱くなっているということだ。 まず、人の記憶には、一時的に保持される「短期記憶」と、記憶として定着して長期にわたって保管される「長期記憶」がある。人は年齢を重ねた分だけ経験値が増え、自ずと、長期記憶の倉庫に荷物が溢れかえってしまう。それゆえに、大人脳は探し物(思い出したいこと)が見つかりづらくなってしまうのである。 引っ越しあるあるに、最初はダンボールに「キッチン」「書斎」「洋服」などと中身を明記し、整理して荷物を入れていたものの、疲れやタイムリミットなどが理由でだんだんといい加減になり、いざ新居でダンボールを開けようとすると「何がどこに入っているのかわからない。全部開けてみないとダメで、時間も労力も無駄にかかる」のような現象がある。これも検索力の欠如により起こることで、同じことが脳の長期記憶倉庫の中で起こっているのである。
検索力を高めるには「復習」が肝
検索力の低下は、ダンボール(=脳の長期記憶倉庫)の中に荷物(=情報)がごちゃごちゃに入っていること、ここにあるはずだと思っていたところを開いてもなかなか見つけられないこと、あるいは、探しているダンボールそのものが見つからないことが原因だ。 大人脳は、ただでさえ長期記憶にたくさんの荷物が保管されているうえに、試験本番まではいつも通りに仕事だってこなしている。当然、仕事上の重要な情報も長期記憶に日々送られているので、何か手を打たなければ、勉強に関する荷物は埋もれていってしまう。 せっかく時間を割いて勉強したのだから、同時に検索力を上げていくことこそが、賢い大人の選択。そのためには、長期記憶に入れっぱなしの状態を長く続けず、定期的に荷物を引っ張り出してきて、中身を整理し直して、いつでも取り出しやすいように保管しておくのが効果的だ。要は、脳にとっていいタイミングで復習することが大事になる。 復習というと面倒くさく感じるかもしれないが、学んだことのすべてを最初から学び直す必要はない。ここで言う「復習」は、軽く目を通して「あぁ、そういえばそうだった。やった、やったわ。思い出した!」と再び記憶に鮮明さを与えること。そうすることで、長期記憶の倉庫の奥底に追いやられた知識や情報を手前の取り出しやすい場所へ移動させることができる。 ネットの検索機能でも、よく見るサイトや繰り返し検索している言葉は、検索結果の上位に表示されるだろう。長期記憶の荷物も、復習をして繰り返し引っ張り出してくることで、記憶にアクセスした際の検索の上位にすることができるのだ。