豊洲移転まで1年 「築地ブランド」は守れるか?
東京・築地から豊洲に移転する新市場が来年11月7日にオープンします。開場までちょうど1年に迫った「豊洲市場」ですが、築地には卸売市場だけではなく、それに隣接する場外市場もあります。観光客らに人気の場外市場や、長い歴史で培われた「築地ブランド」は今後どうなっていくのでしょうか。
関東大震災で移転以来90年の歴史
築地市場の歴史は、関東大震災で日本橋にあった魚河岸市場が損壊したため、1913(大正12)年に市場が移転してきたことから始まります。それから約90年以上も東京都民の胃袋を満たしてきました。 「築地」という地名はブランド化しつつあり、業界関係者のみならず一般にも広く定着しています。昨今、急増する訪日外国人観光客でも築地は人気スポットになりつつあり、銀座と近接しているという地理的要因も奏功して、多くの外国人が築地グルメを味わいにやってくるようになりました。 豊洲に移転するのは、いわゆる「場内市場」と呼ばれる一画です。卸売市場が場内と言われるのに対して、一般人も自由に闊歩できるエリアは「場外市場」と呼ばれています。場外市場は平たく言ってしまえば商店街で、新市場が豊洲にオープンしてもそのまま築地に残ります。しかし、卸売市場が豊洲に移転したら、場外市場のにぎわいにも影響が出ることは間違いありません。 築地のある中央区は、「卸売市場の移転に一貫して反対してきましたが、4年前ぐらいから『移転は止むを得ない』と受け入れて、新しいまちづくりを目指してきました」と話します。 同区では、場外市場は卸売市場に隣接しているという特性があることから、単なる商店街ではないと考えています。例えば、お茶や海苔、鰹節、調味料、食器、調理器具などが豊富に販売されており、それでいてプロが必要とする専門的な品揃えにもなっています。 「卸売市場で仕入れをした後に、必要な食材や器具を買っていく関係者も多いのです。こうしたプロが使うような品は、一般の店では販売していないので、豊洲に市場が移転しても業界関係者は場外にも足を向けてくれると考えています。その一方で、豊洲に卸売市場が移転してしまえば業者の人たちは買い付けで豊洲に足を運ぶことになります。築地が不便になって足が遠のくことも考えられます。そうなれば、場外市場のにぎわいにも影響が出ることは否定できません。築地はすでに全国的な知名度を誇るブランドですので、中央区では卸売市場が移転しても築地のにぎわいを絶やすことがないように新しいまちづくりを進めていく方針です」(中央区都市整備部)