衆院選期間中に見えた裏金議員候補の危機感のなさ 永田町と国民との間にあるズレが大惨敗につながった
今回の衆院選で喫した自民党の大惨敗、逆風となったのは、紛れもなく派閥による裏金事件だった。最も気を使わなければいけない問題。それなのに、自民と一部候補者たちは万全の対策をまるで取っていなかった。 自民から非公認処分を受けて無所属出馬となったある候補者の後援会事務所。窓には堂々と「自民党××選挙区支部長」の文字が張られていた。「選挙区支部長」は選挙活動の拠点として小選挙区ごとに置く「党支部」の責任者で、通常は立候補予定者が務めるもの。「党支部」は政治資金の受け皿となる組織なので、使い道も支部長の責任となる。 選挙戦直前、この候補の陣営関係者は「非公認といっても選挙区支部長はそのまま」と話し、支部の政治資金も支部長の差配で使えると明言していた。「非公認で無所属」なのに「自民の支部長」のままで「自民のお金が使える立場にある」というのはさすがに矛盾がある。非公認の意味があるのかと思わせ、処分の妥当性すら疑わせるものだった。 この関係者には、おかしいという感覚は皆無だった。「当選すれば追加公認で党に戻る」「うちには自民党からどんどん応援演説が来る」。非公認処分自体を軽視しているかのようだった。候補者自身、「マスコミの偏向報道で…」と責任転嫁を口にしていた。 選挙戦終盤。非公認候補が代表を務める政党支部への2000万円の活動費を支給していることが報道された。秘密裏ではなく堂々と支給していたことに、逆に危機感のなさがうかがえる。選挙はイメージが大事。たとえ非公認候補の経費に使われなかったとしても、国民の拒否感はぬぐえず、自民票は確実に減る。 裏金事件に関して、党や各候補者の言い分はあるかもしれない。潔白なら、それを主張したい気持ちも分かる。だが、何より「裏金事件のような騒動をもう起こさないと国民に伝える努力」が乏しかった。永田町界隈と国民との「やっちゃダメなこと」に対する認識・常識のズレは、最後の最後まで埋まらなかった。(樋口 智城)
報知新聞社