12月27日の預金残高20万円、社員14名…絶体絶命の起業8年目の年の瀬、6歳娘の言葉に父は涙が止まらなかった
■大企業から引き合いがあったが営業を凍結した理由 2017年11月、FULL KAITEN ver.1を売り出すと、瀬川も宮本も想像していなかった反響があった。なんと、日本を代表する大手企業7社から、いきなり引き合いが来たのである。 「ある記者さんが『繊研新聞』にほんの数行ぐらい、FULL KAITENのことを記事にしてくれたんです。そうしたら、それこそ日本の大企業というか、世界企業と呼んでいいような大手さんから問い合わせがきたんです。そしてなんと、7社すべてと契約を結ぶことができました」(瀬川) FULL KAITENの持つ潜在的なニーズの強さを物語るエピソードだが、ひとつ、大きな問題があった。 「FULL KAITENは中小企業向けに作ったソフトなんです。日本を代表するような大手企業の場合、扱うデータの量がものすごく大きいので、中小企業向けのソフトではデータが重すぎて動かないんです。いくらクリックしても15分ぐらい経たないと、データが返ってこない。これでは、人を笑顔にするどころではありません」 VCからはいろいろな意見がついたが、瀬川はver.1の営業を一時ストップしてしまう。 なぜか。 「僕は金儲けのためだけでなく、人に喜んでもらうために起業をしたんです。なのに、このままver.1の販売を続けてしまえば、20代の頃の自分と変わらないことになってしまいます」 ■資金調達はできたものの社内トラブル発生 ver.1の営業を凍結した瀬川は、大量のデータを処理できるver.2の開発に取り組んだが、それは瀬川の技術ではもはや不可能な領域だった。あれよあれよという間に資金がなくなっていき、エンジニアを雇おうにも雇う費用がないところまで追い込まれてしまった。 瀬川は再び、VCからの資金調達にトライした。 「今回は、大企業7社と契約を結んだことでFULL KAITENのニーズの強さを証明することができました。そこを強くVCに訴えたのです」 エンジニアを採用する資金を手にして、数名の優秀なエンジニアを雇い入れるとver.2の開発がスタートした。ここまでは、順調と言えば順調だったのだが、ここでベンチャー企業にありがちな、社内トラブルが発生することになった。