【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ:プレビュー】唯一絶対の勝負地「ユイの壁」を4回、誰が真っ先に上り詰めるのか
だからこそ、2024年大会の開催委員会は、発想を大胆に転換した。これまでユイの前に難所を入れてみたり、ステージ前半に登りを組み込んでみたりと、どうにか変化のあるレースを作り出そうと試行錯誤を繰り返してきたが、今年は極めてシンプルに行く。全長198.6kmのコース前半の登りは、コート・ディヴォワール(2.1km、6%)ただ一つ。スタートから85km前後で周回コースに入ると、あとはエレフ坂とユイの壁をセットで4回こなすだけだ。 つまり1年前はシュラヴ→エレフ→ユイを登って降りる37.5kmの周回を3回走ったが、今回は32.6kmのサーキットを4周回。集団を絞り込む難所がもはやユイしかないからこそ、2回目、3回目のユイ登坂から早くも、強豪チームは大胆な戦闘モードに入るかもしれない。また周回距離がほんの少し縮まったことで、たとえば3回目の壁登坂で飛び出し、そのままフィニッシュまで逃げ切りを図る野心家だって登場するかもしれない。
なにより、週の真ん中の水曜日に「チャペルの小道」に集まったファンたちは、激勾配でもがく選手たちをいつもより1回多く応援できるというわけだ。 ただ残念ながらディフェンディングチャンピオンのタデイ・ポガチャルは、タイトル保守には乗り込まない。昨春はクラシックで大暴れし、アルデンヌ3戦全勝にさえ王手をかけたが、今年は初のジロ・デ・イタリア&ツール・ド・フランス連戦を控えて出走数を極限にまで絞り込んだ。過去3勝のアラフィリップも、ほんの1週間ほど前に、実は3月から左膝に故障を抱えていたことを公表し、大好きなアルデンヌは全欠場。また3年前にそのアラフィリップとやりあったプリモシュ・ログリッチも、バスクツアーの落車の影響で、しばらくは静養の日々を過ごすとのこと。
幸いに2年前の覇者にして、プロトン屈指の激坂巧者ディラン・トゥーンスは、ちょうど1週間前のブラバンツ・ペイルで2位に飛び込んだ脚で、今年のフレーシュ・ワロンヌにやってくる。しかも所属チームのイスラエル・プレミアテックには、頼もしい面々が揃っている。5年前にあと一歩で勝利を逃した39歳大ベテランのヤコブ・フルサンに、やはり名うての激坂ハンターのマイケル・ウッズ。さらにはダウンアンダーの山で大暴れしたスティーブン・ウィリアムズも、エースの任務を分け合う。
【関連記事】
- 【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ:プレビュー】フィニッシュ直前までぎりぎりの駆け引きが繰り広げられるユイの壁が勝者を選別する
- 【Cycle*2024 パリ~ルーベ:レビュー】レインボージャージを素敵に見せたいファンデルプールが特別な瞬間を楽しんだ地獄の日曜日
- 【Cycle*2024 パリ~ルーベ ファム:レビュー】世界チャンピオンのロッテ・コペッキーが6人のゴールスプリント勝負を制し初優勝
- 【Cycle*2024 パリ~ルーベ:プレビュー】あまりにも厳しくあまりに特殊な北の地獄から、先頭で生還する豪傑は誰だ!?
- 【Cycle*2024 パリ~ルーベ ファム:プレビュー】季節外れの夏日予報は「クラシックの女王」にさらなる過酷を強いるのか、無骨で非情なる石畳たちが待ち構える