静岡県内水道事業者3割強「赤字」、耐震化進まず 相次ぐ漏水、更新費用増で値上げ加速も
国土交通省が全国の水道事業者の経営状況などをまとめた「水道カルテ」で、静岡県内38事業者のうち3割強の12事業者が「赤字」状態になっていることが25日までに分かった。このうち10事業者は主要な水道管の耐震化率が全国平均(42%)を下回った。能登半島地震では大規模断水が発生し、県内では水道管の破損による漏水が相次ぐ。今後も人口減に伴う収入減や更新費用の増加は避けられず、水道料金の値上げの動きが加速する可能性がある。
水道カルテは2022年度の水道統計を基に、全国の水道事業者の経営状況や施設の耐震化率を可視化した。水の供給コストに対する料金収入の割合を示す「料金回収率」が100%未満だったのは12事業者。御前崎市が68%で最も低く、南伊豆町74%、松崎町84%が続いた。最も高い裾野市は144%だった。 主要水道管の耐震化率も大きな差があった。御前崎市が100%だったのに対し、最も低い函南町は11%にとどまった。東伊豆町13%、伊豆市と下田市各16%、松崎町18%などと伊豆半島の自治体が低い傾向だった。県内平均は45%。 1カ月の水道料金(家庭用20立方メートル当たり)も最も低い長泉町が1150円、最も高い牧之原市が3685円とばらつきが見られた。県内平均は2444円、全国平均は3332円だった。 水道カルテの公表は料金見直しや耐震化の機運を高めるのが狙い。国交省は「強靱(きょうじん)で持続可能な水道システムの構築には、水道事業の運営基盤の強化が必要」と指摘する。 能登半島地震では上下水道施設が損壊して最大約14万戸が断水し、一部地域で復旧に約5カ月かかった。県内では静岡市や浜松市で水道管破損による漏水が続けざまに発生し、水道インフラの耐震化や老朽化対策が急務となっている。 水道事業を担う県内の自治体からは「数年以内に料金を引き上げざるを得ない」との声が上がる。経営効率化に向けて水道事業の広域化が進むとの見方もある。 全国では1347事業者のうち半数超の729事業者が「赤字」だった。