患者数は毎年300万人超え…“うつ病”で配偶者が働けないから、を理由に「離婚」することが非常に難しい理由【弁護士の助言】
うつ病の配偶者から慰謝料や養育費はもらえるのか
それでは、実際、離婚に至った場合、うつ病の配偶者から慰謝料はもらえるのでしょうか。 慰謝料について うつ病は病気であり、かかった本人が一番苦しいはずです。仕事もできず収入もない状態であれば、慰謝料を請求することは非常に困難でしょう。 ただし相手がうつ病のため実家に帰ってしまい、「民法第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」という義務を放棄した場合、またはDVがひどく身体的・精神的に被害を受けた場合で、かつ相手に資産があれば慰謝料請求が認められることはあります。 養育費について 慰謝料は配偶者から受けた精神的損害に対する損害賠償ですが、養育費は親の子どもに対する扶養義務に基づいて支払われる金銭ですので、まったく別のものです。 うつ病でも収入があれば養育費を払う義務がありますが、働くことができず収入がなければ養育費をもらうことは難しいです。ただし慰謝料と同様、相手に資産があれば可能性はあります。
重度のうつ病で会話が成り立たないような状態の場合
配偶者のうつ病の状態が重度で、会話が成り立たなくなったり、意思を示すことができず、離婚に向けて本人が判断できない状態まで陥ってしまうこともあります。その場合、成年後見人と呼ばれる配偶者に代わる代理人を立てる「成年後見制度」があります。 成年後見制度の申し立ては当事者が行いますが、本人による手続きが難しい場合はその配偶者が行うことができます。通常、成年後見人は親族が選定されますが、離婚調停に向けた申し立てであれば弁護士が選任されることが多いです。 成年後見人は被後見人の監護や財産の管理を行なう義務があります。配偶者(被後見人)の利益に基づき、配偶者に代わり成年後見人が離婚調停や裁判に出席し、解決を図ることになります。
他人事ではない…毎年300万人超が受診しているうつ病
うつ病の発症の原因はさまざまです。ストレスが引き金になることもあれば、原因がないまま発症することもあります。 厚生労働省の調査によると、精神疾患で医療機関を受診している患者数は、平成17年以降毎年300万人を超えており、近年はうつ病や認知症などの著しい増加がみられます。 うつ病はかつて「心の風邪」と呼ばれましたが、薬を飲み休養を取れば治る単純な病ではありません。本人だけでなく家族の負担も大きく、生活が一変し支える側の精神状態もまいってしまうこともあります。配偶者がうつ病で悩んでいる方は、地域の病院や保健所のカウンセリングを受け、一人で抱え込まずにサポートを受けてください。 また離婚を決意した時は、弁護士に相談することをおすすめします。うつ病である相手との話し合いや、成年後見人が必要な場合の申し立て、離婚調停の手続き、証拠の収集などは一人で解決するには時間がかかり、精神的負担が大きい内容です。弁護士に依頼することで、離婚に向けて有利に進め早期に解決することができます。 白谷 英恵 Authense法律事務所
白谷 英恵