日産新体制スタート 内田社長が会見(全文1)尊重・透明性・信頼が大切
なぜこうした問題を起こしたのか
しかし国内工場における完成検査問題や、経営者不正から明らかになり、事業の運営上の問題や脆弱なガバナンスなど大きな問題が表面化しました。これにより企業としての社会的信頼を失うだけでなく、ハードルの高い計画を推し進めた結果、急激な業績低下を招いてしまいました。 なぜ日産がこれまでの成長の過程でこうした問題を起こしたのか。日産はこれまでも車の技術の本質を追求し続ける一方で、1つの価値観にとらわれることなく、多様な意見を認め、先進的な商品の開発に、他社に先駆けて挑戦し、数多くのブレークスルーを起こしてきました。その精神を受け継ぎながらグローバル競争に打ち勝つべく、アライアンスと経営面での新たなブレークスルーを起こし、1990年代の経営危機を乗り越え、再び成長軌道に戻すことに成功しました。決して経営戦略や事業戦略などの誤りがあったとは思えません。しかしその運営過程において、企業文化に関わる問題が生じてきたのではないかと私は思っています。目標設定において、できないことをできると言わせてしまう文化をいつの間にかつくり上げしまったことであると思います。 これにより社員の自発的な横の連携や、問題解決に対する意欲をそいでしまい、ハードルの高い目標達成のために短期的成長を求めた行動を起こすことになり、技術開発や商品開発のプロジェクト、将来に向けた設備や人材などへの必要な投資に影響を及ぼすことになりました。販売面においてはインセンティブに頼った短期的な販売増がブランド力と収益力の低下を招きましたが、これはその典型的な事例です。本日より新しい体制がスタートしましたが、私とCOOのグプタ、副COOの関を柱とした経営体制で、議論を尽くして事業運営に当たっていきます。
大切にしている言葉が3つ
私が大切にしている言葉が3つあります。それは尊重、透明性、信頼です。ルノーの仲間やサプライヤーの皆さんと進めてきた購買での経験。中国の合弁会社の総裁を務める中でも、あらためてこの言葉の重要性を革新しました。部下を信頼し、権限移譲を進め、役員、従業員全員が会社の方向性を自分のこととして捉えて取り組むワンチームの風土を醸成し、社員にとって透明性の高い業務運営を行います。お客さま、販売会社やサプライヤーの皆さまをはじめ、広く社内外の声にも耳を傾けて意見が言い合える、異論や反論が許される会社風土をつくっていきたいと思います。 このような考え方が企業の体質として浸透するように、日産の経営陣、および社員の行動指針である「NISSAN WAY」を見直し、確実な浸透に向けてリードします。先ほども申し上げましたが日産の社員の持つ力、能力は高いと信じています。グローバル化を推進する事業運営、ケースに代表されるモビリティの在り方に関する社会的な変化への積極的な対応、どれも間違えない方向です。 しかしそれに向けた進め方、目標設定には現状の実力の認識と、そこからどこまで頑張って伸ばせるのか、論議を十分に尽くし、納得した、チャレンジできる目標を設定することが非常に大事だと思います。これまで日産が基本的に変わらなければならない部分について説明をしてきましたが、信頼の回復と業績の立て直しという足元の現実的な課題にも対処しなければなりません。 私の役割は全経営陣が、この1年間掛けて築き上げた信頼の回復と業績の立て直しの基礎を実行に移して、形にしていくことです。当社は今年6月に指名委員会等設置会社に移行しました。事業運営は私たち執行側がこれまでどおり責任を持って行なってまいります。そしてその事業運営を健全に保つために、取締役会にはしっかりモニタリングをしていただきたいと思います。