スティーブン・ショアが中国の美大での講演を途中退席。「スマホに熱中しながら人の話は聞けない」
カラー写真の先駆者として知られる巨匠スティーブン・ショアは9月19日、中国・北京の中央美術学院(CAFA)に招かれ、「私の人生を変えた5つの経験と、それがいかにして私をアーティストになるよう鼓舞したか」 というテーマで講演を行った。だがその途中、スマートフォンに熱中する聴衆の多さに失望し、席を立ってしまった。 この件を報じた上海日報のデジタルニュースサイト、SHINEの記事に添付された動画には、ショアが厳粛な面持ちで聴衆に語りかける様子が映っている。現在76歳のショアは、「これからお話しすることは失礼にあたるかもしれませんので、あらかじめお詫びしておきます。でも、それは私が現代社会に生きる中で、ずっと気になっていることなんです」と前置きし、こう続けた。 「このことを話し合えば、お互い理解し合えると思います。あなた方は日常生活に注意を払うことの大切さを理解していると思いますが、少なくとも数十人の方々が、私の講義中にずっと携帯電話を見ていました。皆さんはここに話を聞きに来たはずですが、携帯電話を見つめながら人の話に注意を払うことなどできるでしょうか。携帯に熱中しながら誰かと食事を楽しんだり、肌に当たる日光を感じたりすることが出来ないのと同じことです」 しばらく沈黙が続いた後、観客からは拍手が沸き起こった。しかしショアは、「私は、ここで止めるのがいいと思います」と言って立ち上がり、ステージを降りていった。 SHINEによると、講演に出席していた人々は「ひどい誤解があった」と話しており、彼らの多くが、ショアの話のメモを取るためにスマートフォンを使用していたという。そのことをスタッフから伝えられたショアは、とても安心した様子だったという。
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