<日本一を目指して>仙台育英 チーム紹介/2 複数投手制 チーム戦術に自信 /宮城
◇「継投で勝つ」球数制限、起用法が鍵 2019年11月、日本高校野球連盟は公式戦で1人の投手が1週間に投げられる球数を500球以内とする球数制限の導入を決めた。県高野連も同様の球数制限を導入予定。20年春の第92回選抜高校野球大会や春季大会は、これまで以上に投手の起用法が鍵となってくる。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 「僕自身は良い流れだと思う」。高校球児の「肩の負担」が問題視される中、仙台育英の監督、須江航(36)は投球回数を制限する近年の風潮を肯定的に捉える。 仙台育英の選手は「全力投球は1週間に300球未満」という制限の中で、日々の練習で何球投げたかを記録している。「5~8割の力で投げても十分な練習になる」と、須江は肩に過度な負担を肩に課さない練習を模索している。 また、仙台育英は先発投手が五回以降にマウンドを降り、複数の「中継ぎ」や「抑え」の投手と交代するプロ野球さながらの「複数投手制」を敷く。19年秋季大会も、公式戦12試合中11試合が複数の投手による継投で、10勝1敗と高い勝率を誇る。厚い選手層による継投リレーは、選手の健康管理とともに「勝利の方程式」でもある。 だが、高校野球では1人のエースが投げ抜く試合がまだまだ一般的だ。「完投して勝ちたい」と話す高校生投手も少なくない。仙台育英の投手陣は今の起用法をどう受け止めているのだろうか。 「育英は継投で勝つチーム。完投したいとは思わない」。笹倉世凪(せな)は言い切る。系列校の秀光中教校時代、硬式より球速が落ちるとされる軟式野球で140キロ超を記録し、現在の最速は147キロ。同級生の伊藤樹とともに1年生ながら甲子園のマウンドに立ち、仙台育英のエースとして期待されている存在だ。 ただ、19年秋季大会は背番号1を背負うも、7試合で暴投6、与四死球17と安定性が課題だ。「甲子園は甘い一球で負けるかもしれない舞台。良い投手が控えていると思えば安心して投げられる」と語る。 一方、「(19年の)東北大会で完投できたのはうれしかった」と話すのは向坂優太郎(2年)。チームで唯一、昨秋の公式戦で完投を経験。強豪の盛岡大付(岩手)に序盤で失点を喫したが、すぐに持ち直して強気の投球で勝利を挙げた。 だが、向坂は決して完投ありきでマウンドに立つわけではなく、抑えや救援もこなす。「(笹倉)世凪の活躍は良い刺激になっている」と、後輩からも積極的に学ぶ。 休養日こそ設けられるようになったものの、甲子園は試合日の間隔が短い「短期決戦」の舞台だ。「複数の投手で投げる方が、より勝てる」と、須江は自チームの戦術に自信をのぞかせる。【滝沢一誠】=敬称略、つづく ……………………………………………………………………………………………………… ◆秋季大会の出場投手 日付 スコア 対戦校 投手(仙台育英) ◇中部地区大会 8月28日 6―5 東北 吉野、尾形、杉山、伊藤、笹倉 9月 5日 10―1 聖和学園 菅原、阿部恋、粕谷(七回コールド) 7日 7―0 仙台一 向坂、杉山、阿部恋(七回コールド) ◇県大会 9月17日 11―2 聖和学園 笹倉、杉山、吉野(七回コールド) 19日 9―7 東北 向坂、菅原、伊藤、笹倉 21日 9―0 仙台城南 笹倉、伊藤、杉山、向坂(七回コールド) 22日 12―1 仙台商 菅原、伊藤、吉野 ◇東北地区大会 10月11日 9―8 明桜 向坂、菅原、伊藤、笹倉、杉山(延長十一回) 15日 6―1 一関学院 笹倉、向坂、菅原、伊藤、向坂 17日 9―2 盛岡大付 向坂(八回コールド) 18日 11―8 鶴岡東 笹倉、杉山、向坂 ◇明治神宮大会 11月16日 6―8 天理 向坂、粕谷、阿部恋、尾形