文化の根底にあるのは家族のシステム? 仏の知識人が語る「世界の文化は、4つの家族構造に分類できる」
フランスでは最近、著名な知識人が漫画家と組んで、自分の理論を解説する漫画を出版することがトレンドだ。日本で人気の高い人類学者、エマニュエル・トッドも漫画を出していて、同作では自ら考案した家族構造の理論を解説した。刊行にあたり、仏紙「フィガロ」がインタビューしている。 エマニュエル・トッド「西洋から家父長制が消えたのではない。最初からなかったのだ」
思想にも繋がる「家族のあり方」
──あなたは西洋の敗北について、350ページに及ぶ著作を出版されました。その後、家族システムについてのあなたの研究は、漫画『テルール・グラフィック』のなかで描かれていますね。どのような考え方なのか、簡単に説明いただけますか。 話をシンプルにするために、私は4つの主要な家族システムを明確にしました。それらはヨーロッパの4つの大国であるフランス、ドイツ、英国、そしてロシア(まあ、一応)にそれぞれ対応しています。 まずはフランス。18世紀のパリ盆地に暮らす、農民家族を考えてください。そこの子供たちは大人になると、それぞれ独立した世帯を持つために実家を出ます。大人になった2つの世代がひとつ屋根の下に同居するということは、決してありません。つまり、現代の家族の様相とあらゆる面でそっくりな核家族ということになります。 さらに、そこではローマ時代からの考え方として、男子と女子の遺産相続は平等なものになっています。これらはフランス革命以前からのパリ盆地の伝統で、(子供たちの)自由と(兄弟姉妹の)平等というのが、彼らの基本的な価値観です。 英国のシステムもほぼ同じですが、相続についての平等性はなく、両親は遺産を好きに分配したり遺贈したりすることができます。フランスのシステムをより素朴にしたものといえるでしょう。 3つ目はヨーロッパのなかでもリベラリズムの影が薄い地域のものです。つまりドイツ系の家族で、フランス南西部やカタルーニャ地方、ベアルン地方に見られます。相続人は一人、通常は長男だけで、他の子供は家から放り出される。家系が形成され、三世代が暮らす世帯もあります。基本的な価値観としては、権威と不平等があるわけです。 4つ目は共同体的家族です。子供のいる夫婦は男子をそのままにして女子は追い出し、代わりに嫁を引き入れます。こうして世帯を縦にも横にも広げていくのです。ロシア文学に登場する兄弟や叔父さんたちの背景にはこうした文化があります。彼らの価値観には権威主義と平等主義があり、これは共産主義の価値観にもなるものです。
Eugénie Bastié