<春に挑む2024・熊本国府の軌跡>/下 諦めぬ心で4強目標 /熊本
熊本国府は、新チーム発足後の新人戦、九州地区大会熊本県予選の開幕直前の練習試合でともに敗れた。山田祐揮監督が「正直不安はあった」と明かす状態だったが、快進撃はここからだった。九州地区大会決勝まで公式戦9試合のうち5試合が逆転勝ち。リードされた状況でも決して諦めないその粘り強さが際立っていた。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 終盤まで3点をリードされていた。2023年10月7日、県予選準決勝のルーテル学院戦。山田監督は「野球は最後まで分からない。諦めないでできることしよう」と選手らに声をかけ続けた。チーム一のムードメーカー、福山覚楽(かんだい)(2年)も「普通のチームだったら負け試合だと思うけど、熊本国府は誰も諦めていなかった。勝てると信じていた」。 八回だった。内野安打をきっかけに好機を作ると、相手投手の暴投もあり、盗塁や適時打で同点に追い付いた。最終回は2死から。「向こうの焦りも見えた」(山田監督)といい、3連打などで一挙4得点。試合を決めた。マネジャーの可徳ひば利さん(2年)は「ベンチもスタンドも、絶対に逆転するんだという雰囲気で盛り上がっていた」と振り返る。 また監督と選手、選手同士が互いに信じることで勝利につながった試合もあった。九州地区大会の準々決勝、同月31日の大分舞鶴戦。同点のまま九回を終え、無死一、二塁からスタートするタイブレークへ突入した。 1点を入れられた後攻の熊本国府は4番、中嶋真人(まさと)(2年)を迎えた。この日は4打数2安打と好調で、当然「自分が決めてやろう」(中嶋)。だが山田監督の指示はバントだった。 打の中心だけにバント練習はほとんどしない。内心驚いたが「やるしかない」と山田監督を信じた。初球で決めると、二塁走者の主将でチーム一の俊足、野田希(のぞむ)(2年)が思い切ってスタート。野選を呼び込み、好機を拡大させた。続く岡本悠生(ゆうせい)(2年)が中前適時打を決め、サヨナラ勝ちを演出。チームの勢いを加速させた。 初のセンバツを決めたこの冬、チームは例年以上に厳しい練習に取り組む。そのグラウンドの一塁側ベンチには、部員61人全員の共通の目標が黒板に書かれている。 「甲子園ベスト4 ~俺こそ国府~」 互いの信頼と決して諦めない心を胸に、本番に向け一日一日を大切に過ごす。【野呂賢治】