「正直びっくりするギャラも」吉田豪、オールドメディアの仕事を受け続ける理由…20年前から「喋れないと食えない」ことに気づいていた
出版販売額が2年連続で減少し、苦境に立たされている出版業界。ギャラも全盛期の半値近く下がっているという声も聞く中、さまざまなメディアで活躍する吉田豪氏はいまでも紙媒体で連載を持ち、好評を得ている。みんかぶプレミアム特集「オールドメディアvsSNS」6回目では紙媒体の現状、またいつの時代もオファーが耐えない「仕事処世術」について語ってくれた。
いまでも5000円のギャラでオファー。それでも「名誉職」として受け続ける
ボクは雑誌などのいわゆる「オールドメディア」で長く仕事をしていますけど、ギャラ単価はどんどん下がっていますね。出版社から「原稿料を一律●%ダウンすることになりました」的な手紙が届くようになったのは15年ぐらい前からだと思うんですけど、いまはコメント仕事だと3000円とかだったりもして驚くし、漫画や音楽の年間ベストを選ぶアンケート系なんかも数を集めなきゃいけないから5000円ぐらいで頼まれることも多くて、しかも思っている以上に手間がかかるんですよ。記憶だけで書けるやつならまだいいものの、1年間で買ったものをまずリストアップしなきゃいけない場合は本当に過酷で、作業的にも完全に大赤字です。そんな感じで単価はどんどん下がっているのに、請求書をよこせとかマイナンバーを教えろとか面倒なことはどんどん増えてきているから、これは新規でこの仕事をやろうとする若い人も減って当然だろうなって思いますね。 とある音楽誌の連載が実は原稿料5000円なんですけど、1枚のCDについてレビューするのであればその原稿料でもなんとか回収できると思うんです。だけどボクがやってるのはCDを数十枚紹介する連載だから、紹介するよりもっと多くの音源を買ったり聴いたりする必要があって余裕で赤字になっていくんですけど、ボクの持論で「お金か時間のどっちかをかけないと説得力が出ない」っていうのがあって、もらったサンプルCDを聴いて原稿を書くだけだったら何の説得力も出ないと思うんです。そして、この説得力のおかげで別の仕事に繋がっていったりするから、先行投資として金か時間をかけるしかないんですよ。 それに、その記事によって「豪さんにあのとき選んでもらったおかげで、心が折れそうになったのが繋ぎとめられました」みたいなことを直接言われることもあるんです。誰かの人生を変えるかもしれない仕事でもあるので、「名誉職」として今後もやり続けなければっていう思いはあります。