「私はまだこの場所を諦めたくない」111年の自治の歴史『京都大学・吉田寮』訴訟あす判決 耐震性を理由に立ち退き求める大学側 対話を求める寮生側
年齢による発言力の強弱をなくすため『敬語非推奨』独自文化
そんな吉田寮での暮らしを見せてもらった。 (吉田寮に住む総合人間学部の4年生)「豚バラ白菜です、きょうは。(Qきょうは?毎日鍋を?)あればみたいな。人がいて物があれば、そっちの方が安いので」
(吉田寮に住む医学部医学科の5年生)「カレー部の人からカレーを教わってみたり、中国人学生から中華料理を教わってみたり。なんかラッキーなことがたくさんあります」 寮費は光熱費込みでひと月約2500円。福利厚生施設であるだけでなく誰でも対等に受け入れるための独特の文化も受け継がれてきた。 (吉田寮に住む医学部医学科の5年生)「吉田寮は『敬語非推奨』みたいな話がありまして。いろんな会議があって(寮の方針を)決めていくときに、なるべく平等な立場で話したいわけですよ。発言力の強弱があるとよくないので、年齢による発言力の強弱をなくすために、なるべく敬語じゃなくてタメ口でいこうみたいなのがあります。だから18歳で入りたての子と、院生で30歳を超えた人とかが、タメ口で議論したりするのはいいことかなと思います」
元寮生の社会人が寮の会議に加わることも
取材した日も、吉田寮では有志の寮生たちが集まり、新入生向けの寮の紹介パンフレットを作るための会議が行われていた。自治に関わるのは寮生だけではなく、かつて寮生だった社会人なども参加する。 (2023年退寮の社会人 隅谷朋さん)「元寮生なんですけど、リーダーみたいな人がいてその人が決めていくんじゃなくて、1人1人と話し合っていくことで時間はその分かかるんですけど、温度のある寮での方針とかに繋がっているなと私は思います」 大学との話し合いによって守られてきた自治。その歴史が打ち切られたのは2017年のことだった。
『耐震性に問題』で大学側が立ち退き要求 寮生は『話し合い』を求めたが裁判に
大学側は一部の老朽化に伴い耐震性に問題があるとして、全ての寮生の立ち退きと新規入寮募集の停止を要求。代わりとなる宿舎を提供するとしたものの、一部の寮生は退去を拒み、大学側に話し合いの再開を求めた。ところが…。