「“青春18きっぷ”から“シニア65きっぷ”に改称すれば?」の声も “空前の改悪”で18きっぷが若者の「格安旅行のお供」ではなくなってしまう
不正利用を防ぐ狙いもあるか
今回の改変は、チケットショップ対策ではないかと推測する人もいる。事実、青春18きっぷをクレジットカード枠の現金化に使う人はいた。クレジットカードで購入した切符をすぐにチケットショップに転売すれば、まとまった現金が手に入るためである。また、利用せずに余った分をチケットショップに売却する人も多かった。今後はそうした売買ができなくなりそうである。 不正利用を防ぐ目的もありそうだ。従来の青春18きっぷは、利用開始日に駅員から日付が入ったスタンプを捺してもらい、以後は駅員に切符を見せて改札を通る必要があった。駅員が他の客の対応に追われていると、改札口には長蛇の列ができることがあるが、その隙に改札口を強行突破したり、利用日ではない日付を見せて通り過ぎたりする人も多かった。 今回から、自動改札の利用ができるようになる。こうした不正利用を減らす効果が期待できるだけでなく、駅員の手間を大幅に減らすことにもつながりそうである。そのため、現場の駅員からは歓迎の声も上がっているようだ。 ただ、売れ行きが急激に落ちるのではないかという意見もある。これまでの青春18きっぷは、発売が開始されると「とりあえず」買っておく人が多かった。買っておきさえすれば、後からのんびりと旅行先やスケジュールを組み立てることができるためである。ところが、今度からはあらかじめ利用開始日を決める必要があるため、「とりあえず」買うことができなくなるのだ。
JRは鉄道を利用しにくくしている
前出のサラリーマンの男性は「このところ、JRは鉄道をどんどん利用しにくくしています」と、嘆く。 「JRは駅ビル事業などの不動産業にばかり力を入れて、肝心の鉄道事業がおざなりになっている感じがぬぐえません。コロナ禍で利用者が減ったため、増収に努めたいのかもしれませんが、それならフリー切符の充実を図るなどして利用者を増やす取り組みをしてほしい。鉄道会社の本分は、あくまでも鉄道であるはずなのですが……」 国鉄時代、鉄道は若者の格安旅行に欠かせないものだった。ところが、近年は高速バスなどのライバルがたくさん出現しているため、わざわざ青春18きっぷを利用する人も少なくなっていると考えられる。しかも、JR各社は若者よりもシニア層を優遇する切符や旅行商品ばかり発売している。若者を鉄道から遠ざけようとしている、という印象を抱く人も多い。 地方ではローカル線の相次ぐ廃線で、鉄道を利用する習慣がない人も少なくない。一回も鉄道に乗ったことがない子どもも増えていると聞く。春、夏、冬の長期休みの期間に発売されてきた青春18きっぷは、若者が鉄道に関心を向ける貴重な機会となっていたはずである。若者が鉄道を使わなくなれば、鉄道会社の様々な事業に与える悪影響は大きいのではないか。 なお、JR各社は、青春18きっぷの次回(つまりは2025年の春)の仕様は未定としている。ネット上には、今後の売れ行きや評価次第では仕様変更があることを匂わせるコメントも流れているが、できることなら、次回は元の仕様に戻したほうがいいのではないか。SNSに渦巻く怨嗟の声を聞いていると、そのように思えてならない。 ライター・宮原多可志 デイリー新潮編集部
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