「だって円だもん」西村雄一氏が自らの発言を通じて語る“審判の変化”。今と昔で何が違う?
「まさかマイクに拾われているとは」
今季限りでトップリーグ担当審判員を勇退し、JFA審判マネジャーに就任する西村雄一氏が12月19日、記者会見に出席。自身が発し、話題を呼んだフレーズに焦点を当てた。 【動画】「だって円だもん」が飛び出した瞬間 それが生まれたのは、2020年7月に行なわれた鹿島アントラーズ対横浜F・マリノスだ。鹿島がゴール前でFKを獲得し、バニシングスプレーで壁の位置を示した際、相手側から「なんで線が曲がってるの?」という声が上がり、西村主審はこう伝えたのである。 「だって円だもん」 それから4年半。現在52歳で、Jリーグで担当した試合数は682に上る西村氏は、報道陣から「今のレフェリーは個性がある方が多い。意識していたことはある?」と問われた際、当時を振り返り、次のような考えを明かした。 「個性を出そうと思って意識したことはないんですが、 審判員も10人いれば10色だと思うんです。その審判員が育ってきた、もしくは最初に志したものが10人全員違うので。どうしても個性は出てくると思っています。トップリーグを担当するレフェリーは同じ枠組になるべく寄せながらも、また出てくる個性と言うんですかね。 私であれば、選手とのコミュニケーションの中で『だって円だもん』というような発言で楽しんでいただけたのも時代だなと。まさかマイクに拾われているとは全く思っていませんでした。本当に普通にレフェリーとして選手との距離感で発した言葉に、皆さんが触れていただけたことで、そんなきっかけになっていれば嬉しいですね」 「時代」という言葉も飛び出したように、審判のスタイル、イメージは確実に変化している。西村氏の記憶では「私が若かりし頃は、レフェリーが威厳を出しているような表現の方が多かった」ようだ。 「今は選手と一緒に素晴らしいサッカーを作り上げる方向に変わってきているのかな。もしレフェリーの存在がちょっと近くになった、距離感が詰まったと言っていただけるのであれば、『サッカーの一部として審判員がしっかりと認知されて、その質をもっと高めていく、次のチャレンジを進めていく』ための1つの助言でもあると思っています」 十人十色のレフェリーもまた、今日のサッカーの発展を語るうえで欠かせない存在だ。 取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)