自民公認候補選びで紛糾、「保守分裂」続くのか解消か…選挙区と比例区で共存模索する声も〈鹿児島2区〉
衆院選は鹿児島県内4選挙区のうち3選挙区で自民公認候補が敗れた。自民の選挙区議席が半数を割ったのは結党以来初めて。選挙戦を振り返り、今後の展開を占う。(2024衆院選かごしま連載「自民3敗」②より) 【写真】三反園訓氏の応援に駆けつけた県医師連盟の池田琢哉前委員長(右から3人目)と自民系の南九州市議ら=24日、同市頴娃町別府
24日夕、南九州市頴娃町別府の駐車場であった三反園訓氏(66)の個人演説会。雨の中、作業服を着た建設業者や農家、近隣の高齢者が続々と集まった。入り口では、公明党の関係者が「比例区は公明党」と書かれたビラを配っている。 三反園氏の横には、自民党員の地元市議が複数並んだ。友好団体である県医師連盟の池田琢哉前委員長も激励のあいさつ。「保守分裂」となった鹿児島2区を象徴する光景だった。 分裂は事実上の一騎打ちを繰り広げた自民前職の保岡宏武氏(51)のルーツである奄美大島でも起きた。票田の奄美市の奥輝人市議会議長=自民党員=が三反園氏に終日同行してマイクを握った。取材に「国政入り後に信頼関係を築いた。保岡陣営から圧力はあるが割り切っている」と語る。 三反園氏は3年前の前回衆院選で当時の自民公認候補を破り初当選、直後に入党へ意欲を示した。国会では無所属ながら自民会派で活動。今回の選挙前にも自民入りと公認を求めたが、紛糾の末に選ばれたのは昨年2月に党2区支部長となった保岡氏だった。
三反園氏は選挙戦で草の根をアピールし、ライフワークのつじ立ちや地域回りを軸に据えた。その裏で陣営は公明と接触を重ね、協力を呼びかけてきた。建設業や農業、自民系議員の支持も取りつけて保守地盤を切り崩し、保岡氏に2万5000票余りの差をつけた。 当選から一夜明けた28日、報道陣から改めて自民入りへの考えを問われ「党本部が決めること。お願いしている立場」とのみ繰り返した。周囲には「すぐに追加公認される」と自信をのぞかせる。 2区を地盤とする県議からは「民意は示された」と三反園氏の自民入りを容認する声がある一方、異論も絶えない。県知事時代を含め党内重鎮とのパイプをアピールしたかと思えば、派閥裏金事件の発覚後は党員でないと強調するなど「都合のいい政治姿勢」(県議)を疑問視するからだ。「絶対にだめ。県連に混乱をもたらす」と語る県関係国会議員もいる。 追加公認となれば、党2区支部長に就くのが通常で、保岡氏はその座を明け渡すことになる。ただ、保岡氏は取材に「引くことは考えていない。自分を見つめ直して覚悟を決めたい」と意欲をにじませる。30日には早速上京して、石破茂首相と面会した。
党幹事長で県連会長でもある森山裕氏は28日、三反園氏の追加公認について取材で問われ、「選挙区との調整が非常に大事。しっかり党本部で検討する」と答えた。保岡氏を支援する県議からは「次の選挙では比例区に回れないか」と共存を模索する声も聞かれる。
南日本新聞 | 鹿児島
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