外見で得をするのは女性より男性だった…脳科学が解き明かすルックスと幸福の関係
---------- 人間心理に脳科学から鋭く切り込む中野信子さんの連載第14回。人は無意識のうちに容姿の良い人にいい態度をとってしまうということが判明した。ただし、男女で比べると男性のほうが外見で得をするということも。容姿と幸福度や恋愛の関係にも迫る…。 ---------- 【写真】私がゼミ飲み会で「女子のサラダ取り分け」を禁止することがある理由
進化心理学が明かした外見の価値
興味深いことに、人間は容姿の良い人には助けを「求めたがらない」。とくに男性は美女に対して、その傾向が強くなる。女性が男性に対して、敢えて自分の弱みを見せることで気を引こうとするのとは対照的に、男性は女性に対して、自身の格好悪いところは見せたくない、悩みを吐露したりなどして幻滅されたくない、弱い人間だと思われたくない、という心情を持つようである。 ただし、性差が多少はあるように見えるものの、この現象は男性ばかりに起こるものでもなく、相手が異性であるケースだけに起こるものではない。人間は、見かけのいい同性に対しても、やはり助けを求めたがらなくなる、ということがわかっている。これは、進化心理学者リーダ・コスミデスとジョン・トゥービーによって、次のように分析されている。 人間は、「他の人間が『なに』を『誰』のためにしたか」を常に気にしている。その相手が、直接的なインセンティブが得られる人ではなかったとしても、人間はなぜか容姿のいい人を喜ばせたがる。 これは、容姿の良さがある種の権威の象徴であることの証左である、というのである。生まれついて容姿が良いということは、生まれついて権威を手にしているのと同じことである。不平等極まりない話ではあるし、ルッキズムと批判されもしよう。 けれども、事実、人間は無意識的に、容姿を見て相手を判断してしまっている。仕方がない。これを理性で毎日毎夜24時間休みなく隙なくコントロールせよ、というのはおおよそ無理な話である。 人間の理性が十分でないことは私よりもはるかに、多くの人が実感していることではないのだろうか。コスミデスとトゥービーによれば、容姿が良く生まれつくということは、あたかも社会経済的地位が高いことや血筋の良い家に生まれつくこととほぼ同値であると言ってよい。