「照明をつけたまま眠る」NGな理由とは?研究結果が示唆する〈夜間の照明〉がもたらす健康リスク
夜間の明るい照明、特にブルーライトへの露光は、“がんのリスク”を増加させることが研究で示されている。夜間の照明は、睡眠を調整し、がんを抑制するメラトニンの生成を抑制してしまうのだ。これらの影響から身を守るためには、夜間はブルーライトが含まれない照明を使用し、暗い部屋で寝るように心掛け、朝の散歩で日光を浴びることが重要である。 〈写真〉「照明をつけたまま眠る」NGな理由とは?研究結果が示唆する、夜間の照明がもたらす健康リスク ■夜間の明るい照明はがんのリスクを上げる 昼間に十分な日光を浴びることは健康にとって重要だが、リラックスして眠る時間帯となると話は別である。夜間の明るい照明はメラトニンの生成を抑制し、がんのリスクを増加させる可能性があるのだ。 いくつかの研究によれば、夜間の明るい照明、特にブルーライトは前立腺、大腸、特に乳がんのリスクを増加させることがわかっている。イエール大学がんセンター 国際がん疫学研究センターの助教授であるヨン・ジュ博士によれば、「夜間の明るい照明は、睡眠を調整し、抗腫瘍効果をもつホルモンのメラトニンの体内生成を抑制し、それによって乳がんのリスクを増加させる可能性がある」という。 ■メラトニンの分泌が抑制されてしまう 国際がん研究機関(IARC)は、夜勤の仕事は夜間の高い光レベルにさらされることにより、「発がん性の可能性がある」として分類している。2017年の研究では、長期間の交代制の夜勤が乳がんのリスクと関連しており、特に若い成人期に夜勤を行った女性の間で高いリスクがあるとされている。2018年の別の分析では、夜勤が閉経前の女性、特に高強度および長期間の夜間の光にさらされた女性の乳がんリスクを増加させると結論付けている。 夜間の明るい照明ががんリスクを増加させる背後にある理由は、メラトニンの抑制にある。そもそもメラトニンとは何か?メラトニンは、脳の松果体で生成されるホルモンであり、主に暗闇に反応して夜間に分泌される。このホルモンはサーカディアンリズムを調整し、1日の中での睡眠や覚醒などのサイクルをサポートし、がんの発生を抑制する。しかし、特に440~495ナノメートルのブルーライト(自然な日中の光と似た波長)は、メラトニンの抑制を引き起こしやすいため、LEDの普及により夜間の照明の影響が増したのである。 ■睡眠環境の改善とメラトニン生成のために摂取すべきもの これらに対処するためには、夜間はできるだけブルーライトが含まれない照明を使用し、真っ暗な部屋で眠り、毎朝1時間外に出て日光を浴びることが有効だ。遮光カーテンやブラインドを使用するのもおすすめだ。また、アミノ酸の一種、トリプトファンが豊富な食品(肉、豆腐、卵など)やビタミンDを摂取することで、メラトニンの生成を促進することができる。 出典:Getting Too Much Bright Light at Night May Increase Your Cancer Risks. Here's Why Is Melatonin the Next Vitamin D? Night-Shift Work and Risk of Prostate Cancer: Results From a Canadian Case-Control Study, the Prostate Cancer and Environment Study Rotating night shift work and colorectal cancer risk in the nurses’ health studies Light at night and risk of breast cancer: a systematic review and dose–response meta-analysis 文/山口華恵
山口華恵