兵庫県知事選、争点の一つ 文書問題【Q&A】 百条委と第三者委、今も調査続く
17日に投開票される兵庫県知事選は、元西播磨県民局長が斎藤元彦前知事らのパワハラ疑惑などを告発した文書への前知事や県の対応の評価が、争点の一つになっている。文書が記した内容の真偽や対応の適否は、県議会調査特別委員会(百条委員会)や、弁護士でつくる第三者委員会による調査が続いており、結果はまだ出ていない。百条委での審議などから、現時点での経緯や争点を振り返る。(知事選取材班) 【写真】兵庫県知事選で無関係のポスター 掲示板に元首相や人気アニメキャラ Q 元県民局長が3月に報道機関などへ送付した告発文書は公益通報なのか A 斎藤氏は告発文書を3月20日に把握し、21日に片山安孝元副知事らに対し作成者などを調査するよう指示。内容から元県民局長の可能性が浮上したため、本人の公用メールを調べたところ、文書の骨子が見つかったとしている。 9月にあった百条委に参考人招致された上智大の奥山俊宏教授は、公益通報者保護法では、「事実と信じるに足りる相当の理由」などがある場合、報道機関への「外部通報」も保護対象になると説明。公益通報は告発者捜しが禁じられていると指摘した。同じく参考人の山口利昭弁護士も「文書配布は外部公益通報に当たる」と証言した。 一方、斎藤氏は8月の定例会見で「文書には事実と異なる部分が多々ある」「放置すれば多方面に不利益が及ぶ」として作成者の調査を指示したと説明。3月25日の片山氏による聴取で元県民局長が「うわさ話を集めて作成した」と供述したため、「真実相当性がなく外部通報に当たらないと判断した」と主張した。 Q 懲戒処分の評価は A 元県民局長は3月27日に解任された後、4月初旬に文書の6項目について県庁内の公益通報窓口に通報した。県はその調査結果を待たず5月7日に元県民局長を停職3カ月の懲戒処分にした。内部調査に基づいて文書が誹謗(ひぼう)中傷であると断定し、それを配布した事実と、さらに公用パソコンの調査で判明した「勤務時間中に私的な文書を多数作成したこと」など四つの非違行為を懲戒処分の理由に挙げた。 県が公益通報調査の結果を待たずに、「文書は核心的な部分が事実でない」として懲戒処分を先行したことについて、斎藤氏は「弁護士の意見も聞きながら客観的な調査ができた」と説明。調査で判明した非違行為に対する処分で適切だったとしている。 一方で奥山教授は「外部通報者を探索する過程で把握した証拠に基づく懲戒処分。発端が保護すべき外部通報なので、社会の道理に合わない」と述べた。 この内部調査の過程で公用パソコンから見つかった私的文書について、百条委は「個人のプライバシー情報であり、告発文書の真偽の調査とは無関係」として取り扱わないと決めている。 Q 斎藤元彦氏によるパワハラはあったのか A 百条委や第三者委の調査が続いており、結論は出ていない。百条委が今夏に行った県職員に対するアンケートでは、斎藤氏によるパワハラを「目撃、経験などで実際に知っている」と答えたのは140人。証人尋問では、職員から具体的な経験の証言とともに「パワハラではないかと思う」「理不尽な叱責(しっせき)を受けた。社会通念上、必要な範囲とは思わない」などの発言があった。 告発文書に記された「知事が公用車から降りて20メートル歩かされ、激怒した」との疑惑は、斎藤氏が怒鳴ったことが「指導の範囲と思えない」との証言があり、斎藤氏は百条委の証言で「当時の認識では合理的な指摘だったが、振り返ると申し訳なく思う」とした。パワハラであったかどうかは「百条委や第三者委が判断すること」としている。 【告発文書問題】兵庫県西播磨県民局長だった男性が3月、斎藤元彦前知事のパワハラ疑惑など7項目を挙げた告発文書を作り、関係者らに送付した。4月に県の公益通報窓口にも通報したが、県は通報者への不利益な扱いを禁じる公益通報者保護法の対象外と判断。内部調査を進めて誹謗(ひぼう)中傷と認定し、5月に停職3カ月の懲戒処分とした。これに対し調査の中立性を疑う声が出て、県議会が6月、調査特別委員会(百条委員会)を設置。証言する予定だった男性は7月7日に死亡した。斎藤氏は8~9月、百条委で2回証言。9月19日、県議会は斎藤氏の不信任決議を可決。斎藤氏は同月30日付で自動失職し、10月31日、知事選が告示された。