新鋭の兄弟バンド、GliiicoがデビューEP『The Oath』をいよいよリリース!
カナダのバンクーバーで生まれ育ち、フィリピンと日本にルーツを持つNico(G)、Kai(Vo)、Kio(B)の3兄弟からなるバンド、グリーコ(Gliiico)。2022年から活動拠点を東京に移し、敬愛するフェニックス(Phoenix)やクルアンビン(Khruangbin)の来日公演のサポートアクトを務めた実力派だ。音楽活動と並行して、ルイ・ヴィトンやエルメス、ディーゼルなどファッションブランドのランウェイに登場し、モデルとしても活躍している。エネルギッシュな3人が織りなす多様なカルチャーをミックスさせたサイケデリックでメロディアスなサウンドは、強烈なノスタルジーを感じさせる。 【写真の記事を読む】待望のデビューは必聴! 切なさとかわいさが同居する1stシングル「Amiri Jeans」や、Charaを招いた「TRAGEDY feat.Chara」を収めたデビューEP『The Oath』(7月中旬発売予定)まで、音楽活動について訊いた。 ──デビューEP『The Oath』にも収録されている1stシングル「Amiri Jeans」はいつ頃作った曲ですか? Kio 2年前の夏ですね。 Nico CharaさんがラジオでGliiicoの曲をかけてくれた流れでCharaさんからメッセージが来たんです。自分たちの両親の世代のトップミュージシャンなので驚きました。一緒にセッションしようという話になって、生まれたのが「TRAGEDY feat. Chara」です。最初のセッションの1カ月後くらいにまたセッションして、Charaさんが帰った後、良いエネルギーが残ってたのでその流れで「Amiri Jeans」を作りました。そういえば、Charaさんとのセッションの後に、映画『スワロウテイル』を観て、Charaさんの役名がグリコだったことを知ったんです(笑)。 Kai あと、Gliiicoの初ライブの対バン相手がHIMIくんだったんだよね。そのライブにはCharaさんは来れなかったんですが、マネージャーさんと話す機会があって。いろいろなところで繋がっていますね。 Kai 俺たちはシャイなので、レジェンドのCharaさんとセッションするのは緊張しました(笑)。でも、ナイスなお土産をくれたんだよね。 Nico めっちゃいい人で。僕の家で初めて会ったんだけど、すごく美味しい出汁とお茶とオーガニックの歯磨き粉をくれた。それもあってすぐ距離が縮まって、自然な流れでセッションになりました。 Kai 僕たちは家族のバイブスがあるけれど、Charaさんも自然とそれに入ってきてくれたよね。 ──「TRAGEDY」は片思いの複雑な感情を描いた曲だそうですね。 Kai そう。HAPPYな表情とSADな表情、両方のマスクをイメージしました。寂しいけど笑ってる。曲中にも笑ってるような歌が入っています。 Nico 曲によって誰がメロディや歌詞を書くかっていうことが違って。誰がどこを作るかっていうことがはっきり決まってない方が自然で楽しいんです。 Kio うん。自由だよね。 Nico 僕がギターのアイディアが思いつかなかったらKioが弾いたりするよね。ロールモデルがあるより、自由にアイディアを出すことが大事。 ──意見がぶつかり合うことなく自然にできていく感じなのでしょうか? Nico ぶつかることはありません。僕たちは兄弟ですが、脳みそが一緒(笑)。だから好き嫌いも全部一緒で、スピーディに決まっていきます。言葉を交わすんじゃなく、部屋の空気でわかるよね。ちょっと違うなって思うことがあると、空気が重くなる。 ──EPには8曲が入っていますが、「The Oath」はドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」からインスピレーションを受けていたり、「Osampo」は現代の恋愛の複雑さを描いていたり、さまざまなテーマがありますね。 Kai 1カ月くらいずっと『ゲーム・オブ・スローンズ』を見ていた時期があったんです(笑)。その中でどんどんインスピレーションがたまっていって少しずつ「The Oath」ができていきました。 Nico tokyovitaminというコミュニティが持ってる、日本だけでなく海外のアーティストもよく使ってるスタジオがあって、そこにほぼ毎日います。そこで千葉雄喜の「チーム友達」を発表前に聴かせてもらったことがあったり。みんな終電くらいのタイミングで帰るので、その後に僕たちが自由に使ってます(笑)。 ──最初のEPとしてどういうイメージがあったんでしょう? Nico たくさんの音楽があふれている時代ですし、はっきりとGliiicoを紹介できるような作品を目指しました。いろいろなインスピレーション、音を詰めて、8曲でGliiicoの宇宙が見えるようなEPになるといいなって。でも今回はあくまでもイントロダクション。もう次のEPのことを考えています。 ──「Mutron」で楽曲制作においてこだわったことや気に入っているポイントは? Nico アイディアが出てから形になるまでたったの10日ほどでした。考えずにとにかく楽しく制作できました。 ──パスカル・テシェイラがディレクターを務めたMVは全編モノクロで演奏シーンに猫やサッカーボールが登場するユニークなものですが、イメージや完成したものを見た時の感想は? Kio フェニックスのオープニングアクトとしてライブをさせてもらった時に彼らのクルーとして来日していたパスカルに初めて会いました。限られた時間の中ですぐに意気投合して、彼の帰国までの2週間の間に1本MVを撮ってもらえることになりました。出会いから撮影までスピーディに進みましたが、的確に世界観を作り上げてもらえて、ものすごく気に入っています! Kai ようやく皆さまに共有できて、すごく嬉しいです! ──「SAM DIFFRS」はメインボーカルのKaiさんが歌ってる近くでノイジーなコーラスが響いていて、その違和感のあるバランスがGliiicoらしいなと思いました。 Nico 「SAM DIFFRS」は爆発しているような曲にしたかったんですよね。映画『AKIRA』の終盤に、鉄雄の身体が大きく膨らんでいって、ブラックホールみたいなものが作られて爆発するシーンがあり、それをイメージしました。 ──そういったイメージは具体的に言葉で共有するんですか? Kai しないです、テレパシーですね(笑)。 Kio 言葉で言わなくてもわかるよね。 Nico アイディアが思いついたら言葉で説明するよりは、実際にやってみた方が音楽のコミュニケーションとしては有効だと思ってますね。 Kai でもたまに言葉で共有することがあるよね。前、Nicoが「プリンスがボディガードの背中に乗ってギターソロを弾いてるような気持ちで歌って」って画像を見ながら言ったことがあった(笑)。 Nico 確かに(笑)。ボーカルレックの前にどんなフィーリングかを話すことはあるね。 ──多様な音楽やカルチャーの影響を感じるEPになっていますが、いちばん影響を受けているアーティストは? Nico 影響を受けているのはひとつでもなく5個でもなく10個でもなく100個でもないです。万単位(笑)。 Kai いろいろなものが混ざった料理や美術館みたいだよね。ただ、70年代の日本のバンド、ファー・イースト・ファミリー・バンドにはかなり影響を受けています。日本では知る人ぞ知る存在だけど、アメリカでは結構知られていて、たくさんの人に受け入れられるサウンドを鳴らしてた。 Nico あと、山下達郎やYMO、テリヤキ・ボーイズ(TERIYAKI BOYZ)。僕たちはずっとカナダに住んでたので、入ってくる日本のカルチャーに限りはあったけど、いろいろな時代の音を曲に取り入れています。たくさんの国を旅している気持ちですね。アナログの楽器を多く使っているんですが、ジャスティスやフェニックス、カシアス、ブレイクボット、エール(AIR)とかの時代のフランスのアーティストのデジタルとアナログのバランスが一番良いと思っていて参考にしてます。 ──フェニックスといえば、昨年の来日公演のサポートアクトを務めていました。どういう経緯で決まったんでしょう? Nico ヴァンパイア・ウィークエンドのエズラ(・クーニグ)が来日した時に、フェニックスと一緒に作った「Tonight」っていう曲のMVのエズラのパートを日本で撮影するっていう話になったんです。そこで「バンドが必要だよね」という流れから知り合いが紹介してくれたんです。それでエズラがビタミン・スタジオに来て一緒に撮影して。その数カ月後に、フェニックスが東京と大阪でライブをやるからサポートアクトをやらない?」と連絡がありました。フェニックスの『Wolfgang Amadeus Phoenix』を聴いたのが15歳くらいの時で、音楽だけじゃなくMVもスタイルも大好きだったから最初は信じられなかったけど、人生何があるかわからないですね(笑)。 Kai メンバーがGliiico の曲を気に入ってくれて、まだEPも出してないのにめっちゃプッシュしてくれたらしいです。実際会った時に「『Tonight』のMVの時はありがとう」ってお礼を言ってくれて。来日公演の時にフェニックスのライブドキュメンタリーやMVのクリエイティブ・ディレクターのパスカル・テシェイラ(Pascal Teixeira)とすごく仲良くなって、1st EPに入ってる「Mutron」と「TRAGEDY」のMVを撮ってもらいました。 Nico 今でも「新曲良かったよ!」とメッセージが届きます。パスカルが関わってるフェニックスやダフト パンクと違ってGliiicoはまだまだ知られていないバンドだけど、そうやってサポートしてくれるのが泣けますね。 ──GliiicoのMVにも素敵なものがたくさんありますが、GliiicoにとってMVはどんな存在でしょう? Kai まず監督とゆっくり過ごすところから始めることが大事だと思います(笑)。それぞれが自分の世界を持ってるけれど、一緒にチルすることで自然と分かり合える。お互いの好きなものを伝え合ったりしながら少しずつイメージを固めていきます。「Amiri Jeans」のMVは監督のLuke(Casey)と一緒にビールを飲みながらYouTubeでいろいろな映像を見て仲良くなってからイメージを膨らませていきました。そこで大事なのは、かっこいい映像を見るんじゃなくて、面白い映像を見ること。 Nico ビールを飲みながら「こんなの見たことない」って思うようなダサい映像を探す遊びをやってるよね(笑)。 ──「Amiri Jeans」のMVはシュールなシーンも多いです。最後は多様な人種が混ざってのパーティーのシーンで終わります。 Kai いろいろな場所を旅するジャパンロードトリップみたいなね(笑)。最後は変な場所でライブをして終わるのが良い流れだったんじゃないかなって思ってます。 ──「Dealer」のMVではミニチュアの畳の部屋を3人が覗いたり、囲碁のシーンがあったり、日本のカルチャーを感じさせる描写が多いですよね。 Kai 僕たちはカナダ育ちだけど日本人なので、日本のカルチャーを世界にもっと知ってもらいたいという気持ちがあります。 Nico 海外から見た日本って、音楽ならJポップ、映像ではアニメ、食べ物はラーメンと寿司っていう限られたイメージの人もいるかもしれないけど、日本にはもっとおもしろいものがたくさんあります。例えばスナックとかね。「Dealer」のMVには宇宙人が出てきますが、宇宙人を出すんだったら「ウルトラQ」に出てくるみたいな昭和っぽい宇宙人を出したい。怪獣の首の後ろにジッパーが見えるみたいな日本っぽいディティールが好きなんです(笑)。Gliiicoの曲は英語詞だけど、何語かはあまり関係なく、フィーリングとエナジーを大事にしてます。まだ発表してないだけで、日本語の歌詞もあるんですよ。今の時代はどの言語かではなく、良いか悪いか、好きか嫌いかが重要だと思ってます。 Gliiico スペイン系フィリピン人の父と日本人の母を持ち、バンクーバーで育つ。バンド名の由来は子どもの頃に食べていたグリコのカレーから。2023年3月には、フランスのギターバンド、PHOENIXのサポートアクトを務め、話題となった。6月11日(火)に「Mutron」リリース。6月16日(日)には、韓国のミュージックフェスティバル「DMZ PEACE TRAIN」に出演する。ファーストEPのリリースライブを東京・渋谷のWWDにて7月18日(木)に開催する。 https://www.instagram.com/gliiicogliiico/
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