【バイク・インプレ】トライアンフ「タイガー900GT プロ」|大幅パワーアップと充実装備で熟成を果たしたミドルタイガー
オールマイティに楽しい新型ミドルタイガー
新型のタイガー900は吸気ポートの拡大や、フューエルマネージメントの変更で、排気量を変えずに13PSアップの108PSを達成、外観のデザインも少々変わった。 【写真はこちら】「タイガー900GT プロ」の全体・各部・走行シーン これらの主要構成はこのGTプロ、サストラベルを前後とも40mm伸張したラリープロともに共通。動力、走行性能に磨きをかけてグレードアップを狙っている。 今回試乗したGTプロはフロント19インチ。大きな障害物、段差の乗り越え性能より、接地性を重視した選択をしている。トライアンフは「オンロード指向のアドベンチャー」とアピールしているが、走り回るほどに、オンロード指向、という言葉だけではこのバイクの魅力を伝えきれていない気がした。あくまでもラリープロがオフ指向を強めたモデルなのであって、このGTプロは偏りのない、オールマイティなオンオフアドベンチャーだと思った方がいい。 まず、この足まわりはかなりタフだ。舗装路、ダート問わず、全力で飛んだり跳ねたりしない限り、大方の悪路にある路面の掘れ、段差くらいなら底突きせずに難なく踏破する。快適だし、オンロードならそんな路面でスポーティな機動をすることも可能だ。 19インチになっている分、アドベンチャーとしてはフロントの節度もしっかりしており、高速コーナーも充分に対応できる。加えて、アスファルトが剥がれたような舗装路から、握りこぶし二個分くらいのゴロ石が転がっている林道でも躊躇無く飛び込んで行ける。たぶん、タイヤをオフロード寄りのキャラクターの銘柄に変えるだけで、オフでもかなりスポーティな走りができるだろう。 ライディングモードは5種類あり、どのモードからでも簡単にレスポンス特性やトラコン、ABS、リアサスの応答を加減できて、使い勝手はとてもいい。 エンジンは高回転域で強力になっているだけでなく、低中域もこれまでよりよく粘る印象で扱いやすい。3気筒だが不等間隔爆発をする「Tプレーンクランク」の採用で、振動がないのに3500回転あたりまではツインにも似た波動があり、一般的な3気筒エンジンより表情が豊かなのも面白い。 ライポジはアップライトで気楽だし乗り心地もかなりいい。何よりこれだけの走破性がありながら、シート高が低めで取り回しもラク。アッパーミドルのアドベンチャーとしてはかなり魅力的だと思う。
宮崎敬一郎