【有馬記念】初の白毛馬参戦ハヤヤッコ、8歳馬Vなら史上初 “白馬のおじ様”が波乱呼ぶ
年末の大一番、22日の第69回有馬記念(G1、芝2500メートル=中山競馬場)に初めて白毛馬が参戦する。出走馬で最年長の8歳ハヤヤッコ(牡、国枝)は前走アルゼンチン共和国杯で重賞3勝目を挙げ、出走枠最後の16番目でぎりぎり滑り込んだ。8歳馬が勝てばレース史上初。意外性にあふれたアイドルホースがグランプリを盛り上げる。 ◇ ◇ ◇ ★ソダシは“いとこ” 白毛が1年で最も美しく見える季節を迎えた。冬場は毛足が長くなり、白さがより際立つ。ハヤヤッコをドリームレースに送り出す国枝栄調教師(69)は、いつになくうれしそうだ。「有馬だから使うんだ。チャンピオン決定戦というよりは、紅白歌合戦の趣があるからね」。紅白歌合戦なら、もちろん白組だ。白毛馬で初めてJRA重賞を勝った一族の先駆者。2歳下の“いとこ”ソダシはG13勝を挙げたが、距離適性から有馬記念には縁がなかった。いよいよ白毛馬のグランプリ初参戦となる。 1年に1度、必ず激走する。3歳のレパードSも6歳の函館記念も、8歳のアルゼンチン共和国杯も人気薄で勝って馬単万馬券。開業35年目の国枝師も「こんな馬は初めて。いつ走るか分からない。不思議だよな。でも何か持ってる。楽しませてくれる馬だね」と目を細める。 芝からダートへ、再び芝に戻って中距離から長距離へ。「適性が変わったのかどうかは分からないが、言えることは無事是名馬。体質がすごく強くて、脚元が丈夫。それにメンタルが強い」。発情の気配を見せた時は他の牡馬にかみつきに行く対抗心を見せ、朝一番は担当厩務員の腕にガブリがルーティン。気の強さで若さが保たれている。 稽古は動かないことで知られるが、11日の1週前追い切りはウッド6ハロン80秒1(ラスト36秒2-11秒7)の自己最速をマークした。従来の記録を2秒2も更新。「やる気満々。十分過ぎる負荷をかけられた」。攻めた翌日はケロリとしてカイバを食べ、ハードワークにも動じない。全休日明けの17日は坂路を1本上った後、機嫌良く厩舎周りの運動を消化した。 厩舎としては07年に9番人気で大穴をあけたマツリダゴッホ以来のVが懸かる。「あの時は自信あった。もう1回あるかどうか」。常に予想を裏切る馬だけに、2戦続けての一発があるかもしれない。【岡山俊明】 ■朝一番でかみつきに来る 2歳から担当 田村助手 ハヤヤッコが2歳の時から世話をする田村助手は、他に担当するステレンボッシュも桜花賞馬に輝くなど充実した1年となった。48歳の年男。「競馬学校時代に思い描いた夢が今年全てかなった。クラシックをステレンボッシュで勝てて、海外にも行かせてもらった。その上アイドルホースでG2を勝って有馬に出られるなんて…」と感慨深げに話す。 「俺のことを嫌いなのかなめられているのか(笑い)、朝一番でかみつきに来る。でも人懐こくて、かわいいですよ。勝つ時は後ろからまとめてやっつけるからかっこいい」。ビワハヤヒデが好きだった高校2年の93年に、初めて有馬記念を競馬場で観戦した。「人混みでほぼ見えていなかった」。今度は愛馬の走りをしっかりと見届ける。 ◆白毛メモ 元祖は79年に突然変異で生まれた牡馬ハクタイユーで、その子ハクホウクンが97年に大井で白毛初勝利。96年にシラユキヒメが繁殖牝馬となって広がり、主流を形成する。ホワイトベッセルが白毛のJRA初勝利を挙げ、ユキチャン、ハヤヤッコ、ソダシが重賞ウイナーに。今年JRAに出走した1万1589頭中、白毛は8頭。